金木犀の奏鳴曲(ソナタ)

chapter2ーー優しすぎる

小百合は安坂に連れてこられたカフェを見渡し、なるほど「モルダウ」によく似ていると思った。

ドアベルの音は涼しげで、風鈴の音に似ていた。

店の中央にでんと構えた黒いグランドピアノ、カウンター席の奥には、木製の四隅が丸い小さなテーブル。

ガラスの一輪挿しには薄っすらと青く色の着いた薔薇が生けられていた。

安坂が「店に流れるBGMはなく、学生が楽器を持ち寄り演奏している」と話した。

グランドピアノの上に白いネコが座っていれば、モルダウに居ると錯覚してしまいそうだった。

ーーこんなカフェがあったのを、留学して3ヶ月目なのに気づかなかったなんて

と、小百合は店内を今一度、見回した。

「ここは、うちの大学の学生が多いんだ。よその学生は殆どいない。それぞれの大学に大学独特の色があるんだろうな」

安坂が小声で言った。

小百合はそんなもの気にするのかしらと不思議だった。

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