金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
episode6ーー

chapter1ーー何故、君が泣くんだ?

小百合は安坂から聞いた話は、自分の胸に留め口外しないと決めた。

口に出すにはあまりにも腹立たしかった。

ーー郁子の親にも腹が立つけれど、郁子のピアノ指導者

小百合は悔しくてならなかった。

ーーそれでも、詩月くんは郁子の親もピアノ指導者も責めず、郁子を応援するんだ

そう思うと、やるせなかった。

ーー詩月くんが傷ついていないはずがない。誰より傷ついているのは、詩月くんなのに……

小百合はそう思うのに、詩月の思いは大切にしたかった。

ーー郁子のこと、まだ好きなの? 傷ついても、まだ好きなの?

聞きたいことはあるし、言いたいこともある。

でも小百合には、詩月に面と向かって言う勇気はない。

自分だけではなく、ビアンカもミヒャエルも安坂も、詩月に何も言えないでいるんだと思うと、もどかしかった。

ーー詩月くんは不器用だな。不器用すぎる
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