金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
演奏活動は寒さで手が悴み、指の感覚がなくなることもある。

詩月はビアンカとの配信が屋内で、自分のペースで演奏できることもあり、ホッとする。

ビアンカには毎回、手間を取らせて申し訳ないと思っている。

「詩月、小百合に話して良かったの?」

「緒方のことーーああ、別に隠すようなことではないし」

「詩月より、小百合の方が気にしてるよね」

「そうだな」

「詩月は小百合のこと、どう思ってる?」

「一緒にいて楽だな。気兼ねが要らない。ハッと、ああそんな面があったのかと気づく瞬間がある」

「それは多少は期待しても?」

ビアンカは脈がないわけではないんだなと思う。

「好きかどうかを考えたことは?」

「ん?」

ビアンカはどさくさに紛れ聞いてみるが、詩月にはどうやら、そこまで考えたことはなさそうだと察する。

「何でもない」
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