踏んで、蹴ったらホれられた

2. 踏んで……?

 私は今、パーティーが開催されるホテル会場のドアの前にいる

 この日、ここで私は運命を見つけるのだ!


 ……と意気込んで中に入ったものの

 完全に萎縮してしまっている自分がいる

 ひかるんは、

「じゃあ僕適当に動くから、瑞喜(みずき)ちゃんも適当に回ってね~」

 あの子はこういうところがある。ウェルカムドリンクを口に含みながら他の参加者と楽しそうに談笑する友を見つめる

「ふぅ……」

 広い会場内、端に並ぶ豪華な食事にも手がつかないくらい緊張している

 私はこういう場所でどう動いていいのかまるで分からないのである

 壁の花になるためにどんどんちょっとずつちょっとずつ後ろに下がって行く

 あともう一歩下がろうかな……

 そう思い真新しいピンクベージュがつやつやと光るピンヒールのかかとをおもいっきり下げたそのとき

 ガッ!!

「いッ……、」

 え、何かを踏んだ感触。ふいっとラベンダー色のチュールワンピースを翻して振り返ると

 そこにはブラウンの品のあるスリーピーススーツを歪ませて

 靴を両手で押さえながらしゃがみこんでいる一人の男性がいた

 その様子を見て、サァーと血の気が引いていく感覚とともに私のキャリアは終わったと冷静に判断する

 だって、ここに集まるのは会社経営者や有名企業の御曹司ばかり私が身を置く業界は広いようでいてその実とっても狭い世界なのだ

 いや、今はそんなことより目の前の彼に駆け寄るべきだろう! そう舵を切った瞬間に私の体はふわりと蝶が一休みするため肩へと舞い降りるようにしゃがむ彼の顔の高さに近付いた

「す、すみません! 大丈夫ですか?!」

「……大丈夫なものか、いったいどこを見て歩いているんだ!」

 彼はうつむき加減でしごく真っ当なことを私に告げた

「も、申し訳ありませんっ人がいるとは思わず……、」

「君の行く手にいた私が悪いというのか!」

 そこまで言って彼が顔を上げる

 すると……

 そこに見えた表情は眉間にシワを寄せ、眉を吊り上げ痛みからか少し顔を赤くして耐えているようだった

 それを見てますます申し訳なくなり思いっきり頭を下げた。が、そのときっ

 ガンッ!!

「痛ッ……!!」

 今度は彼の頭と私の頭がごっちんとぶつかる。彼はちょうど立ち上がろうとしたタイミングだったようだ

 踏んだり蹴ったりとはこの事である。いや、踏んだりぶつけたり?

 と、つまらないことを考えていると

「そういうところだ!」

「……え?」

「そういうところだと言っている!」

「え、えとっ……」

 私は戸惑う、彼が言わんとしていることが分からない

「君は人の心配の前に間がある!」

 え、気取られた……! この人何者? 私の一瞬の迷いを勘づくなんて

 今まで勘づかれたことなんてないのに!!
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