君の隣で、私になれた


ーー翌日の昼休み。


大学。

三田キャンパス。

私は少しだけ早足だった。


昨日の夜から。

ずっと伝えたかった。


経済学部前。

その伝えたかった人を見つける。


「琉生!」

振り向く。

「お。どうした?」

自然に笑う。


もう避けなくていい。

それだけで嬉しかった。



ーー中庭。


ベンチ。


「ちゃんと話したよ、湊と」


琉生は黙って聞いてくれる。

「全部ちゃんと伝えた」

「うん」

「そしたら…」

少し笑う。

「湊は分かってくれた」

「友達とも普通に会っていいって」

「飲み会ももう大丈夫!」

私は自然と笑っていた。


「良かったな!」

その一言で。

胸が熱くなる。

「ありがとう」

「え?」


「琉生が逃げるなって言ってくれたから」

「私、ずっと逃げてた」

「でも…やっと…」

「ちゃんと向き合えた気がする」


その言葉を口にした瞬間。

胸が温かくなった。


「湊ね、変わろうって」

「頑張るって言ってくれたの」

「すごく嬉しかった…」

「だから私もちゃんと支えたい」

「大切にしたい」


照れくさそうに笑う。

「五年も付き合ってるのにね」

「今さらだけど…やっと。」

「本当の恋人になれた気がする」

私は笑った。


心から。

幸せだった。




ーー琉生side.


莉桜は本当に嬉しそうだった。

今まで見たことないくらい。

穏やかな笑顔。


「良かった」

俺も笑う。

本当に良かったと思った。


湊さんともちゃんと話せて。

またちゃんと笑えるようになって。

それが一番だった。



……そのはずだった。


1人で歩きながら。

さっきの言葉が頭に残る。


『やっと。』

『本当の恋人になれた気がする』

『大切にしたい』


何回も。

頭の中で繰り返す。



……。


なんだ。

これ。




胸の奥が少しだけ。

重い。




嬉しいはずなのに。

安心したはずなのに。



理由は分からなかった。



ーーー琉生side end.

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