君の隣で、私になれた
第39話「兄妹みたい」
ーーー卒業式のあと。
夕方へ差し掛かる頃。
謝恩会まで少しだけ時間がある。
約束していた桜並木へ向かう。
さっきまで賑やかだったキャンパスは。
もう人はまばらだった。
桜が風に揺れる。
「莉桜。」
聞き慣れた声。
振り向く。
「湊っ!」
私は笑って駆け寄る。
でも、湊は何も言わない。
「……?」
少しだけ目を見開いたまま。
私を見つめていた。
「どうしたの?」
そう聞くと湊は小さく笑う。
「いや、綺麗だなって」
「……。」
照れる。
「もう……。今日みんなそれ言う」
「みんな?」
「うん。」
「友達とか、先輩とか、先生も。」
「そう。」
湊は優しく笑う。
「でも…」
「俺が一番最初に言いたかった。」
「……」
何も言えなくなる。
「莉桜おいで」
穏やかで優しい声。
近付く。
指先がそっと髪に触れた。
「髪、似合ってる」
「ありがとう」
崩さないように本当に優しく。
私の髪を整える。
「あと…」
今度は両手で私の頬を包む。
「え、ちょっと……っ」
「動かないで」
近い。
じっと顔を見られる。
「……っ」
恥ずかしい。
「今日なんか少し大人っぽい」
「メイク?」
「うん。」
「いつも可愛いけど、」
「今日は本当に綺麗だよ」
私の目を見て真っ直ぐに湊が言う。
「もう……。」
思わず目を逸らす。
「照れる……」
その反応を見て。
湊は少し満足そうに笑った。
「…プレゼント」
「え?」
ポケットから小さな箱を取り出す。
「卒業祝い」
箱を開く。
華奢なシルバーのネックレス。
小さな一粒のストーンが光る。
「可愛い……!」
「つけてもいい?」
「うん!」
背中を向けて髪をそっと横へ流す。
首元にひんやりとした感触。
留め具を留める指先が。
耳にかすかに触れる。
「……っ。」
少しくすぐったい。
「もう少し……」
その様子を見て湊は少し笑う。