君の隣で、私になれた
帰り際。
陵くんが少し照れながら言った。
「2人でご飯行かない?」
少しだけ考える。
嫌じゃない。
でもまだ違う。
「ごめんなさい。」
「またみんなでなら……ぜひ!」
陵くんは少し驚いて。
それから笑った。
「そっか、了解」
「また誘うね!」
「うん!」
笑って別れる。
帰り道。
紅羽が肘でつつく。
「ねぇ、陵くん」
「完全に莉桜狙いだったね」
「そうかな?」
「そうかなじゃない!」
「最初から最後まで!」
思わず笑う。
「でも、話しやすかった」
「でしょ?」
「いい人だった」
少し考えて。
「うん、いい人……」
それは本心。
「じゃあ次も行く?」
少しだけ笑う。
「うん、また誘って」
紅羽が嬉しそうに笑う。
「よっしゃ!リハビリ成功!」
「もう、リハビリって……」
笑いながら夜道を歩く。
恋をしたわけじゃない。
誰かを好きになったわけでもない。
ただ。
こんなふうに何も考えずに笑って。
他愛ない話をして。
そんな時間も悪くないのかもしれない。
少しだけそう思えた。
恋愛はまだ分からない。
でも“出会うこと”まで。
避けなくてもいいのかもしれない。
ーーーまた数日後。
今日は2回目の合コン。
「ねぇねぇ!」
待ち合わせ場所。
紅羽がいつも以上にテンションが高い。
「今日さ!」
「相手、総合商社らしいよ!」
「しかも全員28歳前後!」
「やばくない!?」
思わず笑う。
「紅羽、分かりやすすぎ!」
「だって!総合商社だよ!?」
「エリートじゃん!しかも年上!」
「これは期待しちゃうでしょ!」
「ふふっ。」
つられて笑ってしまう。
私にはあまりピンと来なかった。
兄も総合商社で働いている。
だから。
“すごい会社”
というイメージより。
“兄が働いてる会社”
という印象の方が強い。