君の隣で、私になれた
ーー二軒目。
「莉桜ちゃん!LINE交換しよー!」
「うん。」
交換する。
「このあともう一軒!」
「ごめん、今日は帰るね」
「じゃあ今度2人で会おうよ!」
「……みんなでなら」
「えー。じゃあ約束!」
笑いながら。
頭をぽん、と触られる。
「……。」
また少しだけ。
私は笑顔が固くなる。
「拓海!」
紅羽がすぐ笑う。
「それ嫌がる子もいるから!」
「あ、ごめん!悪い悪い!」
拓海くんは悪びれなく笑う。
本当に。
悪気はないんだと思う。
だからこそ。
何も言えなかった。
帰り道。
夜風が少し冷たい。
「疲れた?」
紅羽が聞く。
少し考えて。
「うん、少しだけ」
「だよね、見てて分かった」
「悪い人じゃないんだけどねー」
「悪い人じゃない」
「でも距離が近い人って」
「ちょっと苦手かも」
紅羽は納得したように頷く。
「確かに莉桜そういうの苦手そう」
少し歩いて。
「あれ?」
紅羽が首を傾げる。
「でもさ……」
「琉生も結構距離近くない?」
「肩組んだり、頭触ったり、」
「大学の頃から普通にしてたじゃん!」
私はあっさり答える。
「琉生は大丈夫」
「え?」
「昔からだからかな?」
少し笑う。
「全然気にならない」
「むしろ自然」
紅羽が黙る。
「……。」
何かを考えてるような表情。
ふっと笑う。
そして。
「で?」
話題が変わる。
「今日の合コンはどうだった?」
莉桜は少し考えて。
「やっぱり……」
「悠真さんが話しやすかったな…」
「お!!そう思った?」
「うん、一緒にいて自然だった」
「じゃあ2人で会ってみなよ!!」
少し考えて。
「……うん。」
「1回会ってみようかなぁ」
紅羽は笑う。
つられて私も笑った。
そして紅羽だけが。
心の中で。
(“自然”なんじゃない。)
(“琉生だから”なんだよ。)
そう思った。
でもその言葉は。
まだ口にはしなかった。