君の隣で、私になれた


ーーー社会人2年目の冬。

ーー琉生side.


いつもの4人。

仕事終わりの居酒屋。


何気ない仕事の話。

他愛ない近況報告。

いつも通りの空気だった。



「そういえばさー!」

紅羽が思い出したように笑う。

「実はね!」

「莉桜と合コン行った!」


……合コン。

グラスを持つ手が。

ほんの少しだけ止まる。


そういえば。

「考えとく。」

前にそう言っていた。

でも、莉桜のことだから。

きっと行かない。

どこかで勝手にそう思っていた。


「へぇ。」

できるだけ自然に返す。

「どうだった?」

「めっちゃ楽しかった!」

紅羽が笑う。


「しかもね!」

「1回じゃないから!」

「3回!」

「3回?」

新が少し驚く。


「そう!」

「メーカー営業!」

「総合商社!」

「不動産営業!」

「いろんな職業の人とした!」

笑い声が響く。


でも。

俺の頭の中だけが。

静かだった。


営業……

思わず苦笑する。


俺も同じ職種だから。

ああいう場で。

どんな男が来るかなんて。

嫌ってほど知ってる。


話が上手い。

距離が近い。

空気を作るのが上手い。

女の子を楽しませる方法も知ってる。


そして総合商社。

20代後半。

頭に浮かぶのは……


落ち着いた男。

聞き上手。

余裕がある。

年収も肩書きも申し分ない。


莉桜が苦手なタイプじゃない。

むしろ好きそうなタイプ。


胸の奥が少しだけざわつく。


……いや。

落ち着け。

フリーだったら合コンくらい行く。

別に当たり前だ。

俺だって誘われれば行く。


『合コンに行った』

それだけ。

まだ何も始まってない。


そう言い聞かせる。




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