君の隣で、私になれた


「で?収穫あった?」

新が笑う。

「聞いてよ!」

紅羽が身を乗り出す。

「あ……そういえば悠真さん!」

「悠真さん?」

「総合商社勤務の27歳!」


「莉桜。」

「2人でカフェ行ったんでしょ?」


……え。

思考が止まる。


2人で会った。

合コンじゃない。

みんなでもない。

2人。


それは全然違う。



「うん。行った!」

莉桜が少し照れながら笑う。

「どうだった!?」

紅羽が目を輝かせる。


莉桜は少し考えて。

静かに笑った。

「楽しかった!」

「すごく話しやすくて……」

「居心地よかった」

……居心地。


「話してて落ち着く人だった」

心臓が嫌な音を立てる。

「ちゃんと話聞いてくれるし、」

「一緒にいて自然だった」


全部、覚えてる。

前に聞いた莉桜の好きなタイプ。


今、莉桜の口から出た言葉は。

あの日とほとんど同じだった。


つまり。

その総合商社勤務地の男は、

莉桜の理想に。

ちゃんと当てはまってる。



グラスへ視線を落とす。


あの日。

距離を置こうって決めた。

俺のせいで莉桜が傷つくくらいなら。

少し離れた方がいいって。


莉桜が笑えるなら。

相手は俺じゃなくてもいい。

そう思った。



……違う。

全然違った。


笑ってほしい。

幸せになってほしい。

その気持ちは今も変わらない。


でもその隣に。

別の男がいることだけは。

どうしても受け入れられない。


その男は、きっといい人だ。

話を聞いてくれる。

押し付けない。

落ち着いてる。

莉桜が安心できる理由も分かる。


だからこそ怖い。


もし、このまま。

少しずつ距離が縮まったら……

俺はもう間に合わない。


その瞬間。

はっきり分かった。


引いてる場合じゃなかった。

見守ってる場合でもなかった。


初めて。

誰かに取られるかもしれない。

そんな感情を知った。


恋愛なんていくらでもしてきた。

でも思い返せば。

すべて相手が来てくれた恋だった。

好きだと言われて付き合って。

別れて、また誰かと出会う。

そんな恋ばかりだった。


自分から。

誰かを追いかけたことなんて。

一度もない。



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