君の隣で、私になれた


グラスを口に運ぶ。

いつも通り笑う。

誰にも気付かれないように。


それでも心の中だけは。

もう決まっていた。


もう、待つだけじゃ終われない。


初めて。

誰かに選ばれるのを待つんじゃなくて。

自分から。


この恋を掴みにいこうと思った。



ーーー…

「じゃあ、そろそろ帰る?」

二軒目を出る。


冬の夜風が頬に当たる。

四人並んで歩く。


紅羽は新と何か話して笑っている。

俺と莉桜が少し後ろになっていた。


さっきの会話がまだ頭から離れない。



「莉桜。」

気付けば名前を呼んでいた。


「ん?」

振り向く。

いつもの笑顔。

それだけで少し安心する。


「来週、休みいつ?」

「水曜日!」

「俺も水曜」

少し笑う。

「じゃあ遊び行こ」

「え?」

「2人で」


一瞬だけ。

莉桜が目を丸くする。

でもすぐ笑った。


「いいよ!どこ行く?」

その一言に。

思わず笑ってしまう。


「考えとく」

「えー!」

「楽しみしてて」

少し得意げに笑う。

「やったー!楽しみ!」

屈託のない笑顔。


……。

思わず頬が緩む。


「ん?なに?」

莉桜が不思議そうに首を傾げる。

「いや、なんでも」

笑ってごまかす。

「変なの」

莉桜も笑う。


その笑顔を見ながら改めて思う。


……やっぱり

この笑顔をもっと見たい。




駅に着く。

「じゃあね!」

「おつかれ!」

それぞれ反対方向へ歩き出す。


俺は一人になって。

ようやく息を吐いた。


今日。

初めて自分から好きな人を誘った。


今までの恋愛は全部。

誰かが俺を好きになってくれた。

俺はその手を取るだけだった。


でも今回は違う。

初めて自分から手を伸ばいた。


まだ何も始まってない。

それでもたった一歩。

その一歩が今までで一番大きかった。



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