君の隣で、私になれた
「……ふふ。」
相変わらず説明が最低限。
でもなんとなく伝わる。
今日は本当に適当。
グレーのセットアップの部屋着。
パーカーを羽織って。
髪は軽く梳かしただけ。
メイクも眉とリップだけした。
鏡を見る。
いつもよりも薄い顔。
「……ま、いっか」
ーー約束の時間。
外へ出ると。
見慣れた黒いSUVが停まっていた。
助手席の窓が下がる。
「おつかれー」
「おつかれ!」
ドアを開けて乗り込む。
車内の琉生を見て思わず笑った。
「よかった、琉生もラフだ」
黒のパーカーにグレーのスウェット。
髪もセットしてない。
いつもより少し幼く見える。
「黒髪でノーセット初めて見たかも」
琉生が笑う。
そして少しだけこっちを見る。
「……やっぱオフでも可愛いな」
あまりにも自然に言うから。
一瞬だけ言葉に詰まる。
……また、その言い方。
最近前より少しだけ。
ドキッとする。
「……。」
照れ隠しみたいに笑って。
「琉生もオフでもかっこいいね」
言った瞬間、自分で少し照れる。
前だったらこんなふうに。
褒めるときに照れたりなんて。
しなかったのに。
琉生は少しだけ目を丸くして。
それから、ふっと笑った。
「ありがと」
車は新の家へ向かって走り出した。