君の隣で、私になれた
第10話「言わないで」
ーーーイルミの後。
そのまま4人でバイト。
「いらっしゃいませー」
いつも通り。
…のはずだった。
「莉桜、そのオーダー違う」
「あっ、ごめん!」
慌てて伝票を見直す。
まただ…
今日は何度も同じようなミスをしている。
「莉桜?大丈夫?」
紅羽が小声で聞いてくる。
「ごめん、大丈夫!」
笑って頷く。
大丈夫。大丈夫。
そう言い聞かせる。
でも。
さっきのLINEを思い出すたびに。
胸の奥が少し重たかった。
『なんで先に言わないの?』
『男いるなら先に言って』
頭から離れない。
仕事中で集中しなきゃいけないのに。
昔から湊は心配性だった。
だけど最近はそれがもっと強くなった気がする。
ーー閉店後のバックヤード。
「はぁー、おわった!」
紅羽が椅子に倒れ込む。
「疲れたー!」
「うるさい」
新が即答。
「ひど!」
いつものやり取り。
でも、今日は少し違った。
「莉桜」
新が言う。
「ん?」
「体調悪いのか?」
「え?」
「今日めずらしくミス多かった」
紅羽も頷く。
「たしかに!なんかあった?大丈夫?」
2人とも心配そうな顔で見てくる。
私は少しだけ目を逸らす。
「……昨日、寝るの遅くて」
いつものように笑う。
「たぶんそれかも、ごめん」
紅羽が安心したように笑う。
「そっかぁ!今日は早く寝なよ!」
「もう既に遅いだろ」
新が時計を見る。
また笑い声が上がる。
大丈夫。
なんとか誤魔化せた。
そう思った。
「じゃあ先帰るわ」
「おつかれー!」
紅羽と新が先に出ていく。
静かになる。
私も帰ろう。
スマホを手に取る。
湊からのLINEに返事を返しながらドアへ向かう。