君の隣で、私になれた
しばらくして。
「おい湊」
友達が言う。
「あれ大丈夫か?」
指差した先。
チャラそうな男の客3人組。
莉桜に絡んでいる。
「可愛いね」
「彼氏いる?」
「今度飲もうよ」
莉桜は笑顔を崩さない。
でも少し困っている。
距離も取っている。
俺が立ち上がろうとした。
その時。
「あれ?」
聞き慣れた声。
神崎琉生だった。
「何してんの?」
笑いながら割って入る。
「いやー可愛いからさ」
男たちも笑う。
「分かるけど」
琉生も笑う。
「うちのエース困らせないでよ」
冗談みたいな口調。
自然に莉桜の肩に腕を回す。
そして自分の方に少し引き寄せる。
「仕事中だから勘弁してあげて」
言い方は柔らかい。
でも断っている。
男たちも空気を読む。
「あーごめんごめん」
「ごめんねー」
そのまま引いた。
神崎が振り返る。
「莉桜、大丈夫?」
「うん」
莉桜が笑う。
「ありがと琉生」
「どーいたしまして」
神崎も笑う。
その距離感。
その空気。
その自然さ。
俺は目を離せなかった。
莉桜は笑っている。
嫌がっていない。
むしろ安心したように見えた。
その光景に胸がざわつく。
助けてもらったから?
友達だから?
違う。
男として見ているかどうかなんて関係ない。
やっぱりああいう男は危険だ。
本人にその気がなくても。
周りが放っておかない。
神崎琉生は人との距離が近すぎる。
誰に対しても。
きっと悪気もない。
だから厄介だ。
そして。
莉桜はそれを受け入れている。
それが一番危険だった。
俺は静かにグラスを握った。
表情は変わらない。
けれど。
心の中では。
神崎琉生への警戒心が。
決定的なものに変わっていた。