この恋心を悟られてはいけない
 初めてこの場所に来た時、怪我をしたヴェルデの治療をしてくれたのが彼だ。あまりにも綺麗な瞳に吸い込まれそうになったからよく覚えている。

 思えば一目惚れだったのだろう。
 初めての恋だったから、気づいたのはずっと後のことだが。客からリクエストされた恋愛ソングを歌っていた時に自覚するなんて思わなかった。
 
 あの時はパニックで散々泣いてしまった。
 自分は王都に、父は炭鉱に働きに出ているのだとか、シチューが好きだとかどうでもいいことを散々話した気がする。

 思い返すとなかなかに恥ずかしい。

 恋を自覚してからも、あの時のお礼を告げに行くことなんてできなかった。
 それにきっと彼はヴェルデのことなんて覚えていないだろうと。そう思っていた。
 
 いや、覚えているはずないか。
 警備小屋には毎日のように城下町中の人がやってくる。もう七年も前のことを覚えているはずがない。

 前の店にいた時に来てくれたのだろう。
 ならここで話を広げるのは迷惑というものだ。触れられたくないこともあるかもしれない。
 
 それに、彼がここに来た理由は一つ。
 仕事のためだ。ペコリと頭を下げるだけに留めておく。

「おう、リオネルじゃねぇか。お前が出てくるなんて珍しいな」
「今追っている事件との関わりがあるかもしれないからな。それで色は」
「緑だ。ちょうどこの髪みたいな」

 店長はヴェルデの髪を指さしながら答えた。
 するとリオネルと呼ばれた騎士は「やはりそうか」と呟きながら椅子に腰を下ろす。
 
「何かあるのか?」
「先ほど提出してもらった証拠品と関連があるんだが……」
 
 その言葉を皮切りに、騎士団側の事情を話してくれた。
 
 騎士団は長らく薬物売買組織を追っているらしい。
 そして最近、売買する場所の手がかりを掴めたらしい。
 
「それが、緑色の鳥だったと?」
「捕らえた者から聞き出した話をもとに描いたものがこれだ。店で使っているものと同じか?」
 
 ヴェルデとアンセルは目の前に差し出された絵を覗き込む。そしてほぼ同時にフルフルと首を横に振った。
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