この恋心を悟られてはいけない
「入り口と出口は固めさせてもらうつもりだが、常連とは?」
「酒とつまみとヴェルデの歌を目的にくる、声がでかいだけの善良なおっさん達だ。この辺だと夜に飲み食いだけする安い店はないからうちの店を利用してるみたいだな」
「確かに彼女の歌には店に通う魅力があるから」
「酒と料理も美味いぞ。取り調べが無事に済んだら食いにくるといい」
「ああ、近いうちに」

 リオネルは納得したように頷く。店長は用意された紙に店の間取り図を描く。出入り口として使えそうな場所を念入りに。

 決行に備えて話し合い、ヴェルデとアンセルは一足先に城を後にした。買い物に行くと出てきた手前、手ぶらで戻るわけにはいかないのだ。

「あった!」
「同じのあるなんてツイてるな〜。じゃあこれと、後そっちのランプも一つ」
「二つ買うんですね」
「予備に一個あった方がいいだろ」

 ランプが壊れることなんて早々ないのだが、何か思うところがあるのだろう。ランプを受け取り、店へと戻るのだった。

 
 開店までの時間、ヴェルデはひたすらに雑巾を縫う。チクチクチクチクと無言で針を動かすのである。

 念のため、例の部屋からはタオルを回収してきていない。何が証拠品になるか分からないからだ。これらも場合によっては調べられるのだろうが、その時は糸を解けばいい。

 こうして縫っているのは、元々の予定をなぞることで少しでも心を落ち着かせるため。同時に更衣室に出入りするスタッフを確認するためでもある。

 来たら雑巾縫いを切り上げてホールに出る手筈となっている。
 
 彼女が出勤してきたのは開店ギリギリの時刻。メイクも軽く済ませ、店に出て行った。ヴェルデもすぐに彼女に続く。

 そして開店早々入ってきた新規の客から『オレンジジュース』のオーダーを受ける。まさかリオネル本人が来るとは思わなかったが、事前に決めた手筈に従う。
 
 彼女の担当客はまだいない。
 捕まえるなら今がチャンスだった。
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