この恋心を悟られてはいけない
 開店前にやってきた私服のリオネルから聞かされて、思わず声を失った。
 
「喉を掻きむしり、叫びながら死んでいった。口封じのために殺されたのだろう。調べたところ、昨晩本が差し入れられていた。おそらく、それに毒が塗られていたのだろうとのことだ」
「少し気になることがあるんだが、薬物売買をしていたのならそこまで金に困るものなのか? あいつ、うちでの稼ぎは悪くなかったんだよ。なんか事情があるのかと思って深くは聞かなかったけどよ」
 
 この手の店で働く者はお金に困っていることがほとんどだ。だからこそ、短期間で高額を稼げる夜の店で働く道を選んだ。

 事情を深くは聞かないのが暗黙の了解となっている。だが今回は話が別だ。
 
「よほど金に困っていたか、自らも薬物使用者だったか。後者なら儲けた金は全て薬に消えるだろうな」
「実は私も気になることがあるんです。今まで気づかなかったんでんすけど、よくよく考えてみると、彼女が不審な動きをするようになったのって私が店で腕時計を見つけてからなんです」
 
 思い出すのはひと月ほど前。
 ホールスタッフの一人に腕時計をなくしてしまったと泣きつかれ、店内を大捜索したのだ。

 結局、手洗い場に落ちていた。酔った時に落としたのだろう。
 かなり分かりづらいところにあったが、開店時には確実にあったことと、他のスタッフが閉店時にはしていなかったと証言したことで、捜索範囲が絞りこめた。
 
 彼女が部屋の服を利用するようになったのはそれからだ。
 一見すると特に関わりがないように思えるが、今になって思うとわざと申請をしないことで疑ってくれと言っていたようなものだ。

 実際、リオネルに確保された際、彼女は抵抗らしい抵抗をしていない。
 
「そういえば一緒に入ってたメモはなんだったんだ?」
「解読中だ。だが彼女が死の間際叫んだのは『ヴェルデ』の名前だった。その後、微かに逃げろと言っているようにも聞こえたと。俺はその場にいたわけではないが、犯人は君を狙っているのではないだろうか」
「え、私? なんで……」
 
 犯人にとって都合の悪いことを知ってしまったとでもいうのか。
 背筋に冷たい汗が伝う。だが必死に考えたところで、殺人を犯す相手に睨まれるようなことをした覚えがない。
 
「理由は不明だが、狙われている可能性がある以上、放ってはおけない。俺が警護に当たることとなった。店内での警護はもちろん、出勤退勤時には家への送迎を行うつもりだ」
「なんでですか!?」
 
 先ほどよりも大きな声で疑問の言葉を口にする。
 けれど彼は冷静そのものだ。
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