この恋心を悟られてはいけない
「俺はいいと思うぞ。騎士に守ってもらえるなら安全だろ」
「そんな簡単に……」
「犯人が捕まるまでの辛抱だ。警護がしやすいよう、ヴェルデはホールかキッチンに立たせるようにする。リオネルはカウンター席か奥の席の好きな方を使ってくれ。奥は常連がいるからうるさいが」
「そちらに行こう」
「勤務時間も変えよう。お前もずっとヴェルデを見ているのは大変だろ」
「仕事だから問題ない」
「感情面ではなく、他の仕事との兼ね合いの話だ」
「それは……」
「常連達が帰ったら上がるようにして、昼前後に出てきてもらうようにすればいいか。買い物と仕込みは俺と一緒にすればいいし、掃除も一階なら見てられるしな」
 
 本人を抜きにして、話はサクサクと進んでいく。ヴェルデが抗議の声を上げても、二人揃って無視を決め込む。ヴェルデを心配してのことだと理解していても悔しいものだ。

 リオネルが奥の席に陣取ったのを確認し、ようやく仕方ないと諦めた。開店の時間が間近に迫っていることもあり、渋々更衣室に足を向けるのだった。
 
 だが店の奥は常連達の指定席のようなものだ。
 若い男が一人、ポツンと座っていれば目立つ。それも店側に気を使ってか、食事も酒も頼んでくれるからなおのこと。

 接客をするのは当然のようにヴェルデである。例のスタッフを確保した時に居合わせたホールスタッフはもちろん、他のスタッフからの視線が痛い。

 だがスタッフよりも鋭い視線を向ける人もいる。向ける相手はヴェルデではなく、リオネルではあるのだが。
 
「ヴェルデちゃん、この人は?」
 いつもと同じくらいに来店した常連達は、見慣れぬ若い男を睨みつける。
 
「えっと、この人は今日初めてくるお客さんで」
「ヴェルデ嬢を指名したのはまずかったか?」
 
 ヴェルデが適当に誤魔化そうとしていたというのに、リオネルは火に油を注ぐかの如く。
 どうせこれからしばらくは警護するのだから指名したと言ってしまった方が早いのは分かる。理解はできる。だが言い方というものがあるだろう。

< 20 / 34 >

この作品をシェア

pagetop