この恋心を悟られてはいけない
 テーブルを片付けながら、リオネルに声をかける。

「あの、大丈夫でしたか?」
「ああ、気のいい人達だった。本当に君のことを大事に思っていて」
「彼らにはこの店に来てからずっとよくしてもらってるんです。あ、追加で何かいりますか?」

 いつもの調子で声をかける。
 けれど彼は軽く首を振り、ヴェルデの耳に口を寄せた。
 
「そろそろ上がりの時間だろう? 裏口で待ってる」

 低い声で囁かれ、ビクッと身体が跳ねた。
 彼は平然とした様子で自身の腕時計を指先で叩く。今日は呼び出しがあるからと早く出勤したため、上がりも早いのだ。
 
 耳元で話したのは、周りの客に聞かれないため。堂々と一緒に店を出れば、店外での営業もやっているのかと勘違いされてしまう。

 リオネルは店のことも考えてくれたにすぎないのだ。騎士団服ではなく、わざわざ私服に着替えてからきてくれたのも気遣い。

 男性に耐性がないヴェルデが過剰に反応してしまっているだけなのだ。

「……着替えてきます」
「ああ」

 文句を言いたい気持ちをグッと堪え、赤くなった顔を彼から背ける。そして早足で更衣室に向かったのだった。
 
「お待たせしました」
 裏口でリオネルと合流した時にはもうすっかり顔の熱も引いていた。
 
「家はどっちだ?」
「こっちです」

 リオネルに案内する形で歩き慣れた道を辿る。
 だが家が近づくと、リオネルの表情が次第に硬くなっていく。警戒してくれているのだろう。
 ヴェルデは深く考えず、アパートの前で足をとめた。

「ここです。送ってくれてありがとうございました」
 ペコリと頭を下げる。
 けれど彼の表情は先ほどよりも険しいものになっている。

「一人暮らしだと聞いていたんだが」
「そうですよ?」

 ここは単身者向けのアパートだ。さほど広くはないが、その分、お値段もかなり手頃だ。

 なによりヴェルデが家で過ごす時間は長くない。シャワーは店のを使わせてもらっているし、食事だって三回のうち一回は店の賄いで済ませている。場合によっては昼も追加され、朝は抜くことも多い。

 休日はいつもよりもしっかり寝て、洗濯物をして、買い物に行って、と過ごしていればあっという間に終わってしまう。
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