この恋心を悟られてはいけない
他のスタッフからの生暖かい視線を受けながら、ヴェルデはプリンを持ってリオネルのテーブルに向かう。
プリンは少し前にビリーと店長に試食してもらい、ともに合格をもらっている。明日からは店に出せると言ってくれた。それでも少し緊張してしまう。
「こちら試作品のプリンです。よければどうぞ」
「違う。『ヴェルデのプリン』だ。明日から期間限定商品として出すつもりだから感想を聞かせてほしい」
後ろからやってきた店長がすかさずヴェルデの言葉を訂正する。売り込みにきたのだろう。そこまではいいが、商品にヴェルデの名前を付けるなんて聞いていない。驚きの表情を向ける。だがヴェルデよりもリオネルの方がずっと驚いていた。
「君が作ったのか?」
「えっと、一応料理長と店長からは大丈夫って言ってもらえたんですが、お口に合わなかったら全然残していただいて大丈夫ですので!」
「ありがたくいただこう」
「甘いもの、お好きなんですか」
「甘いものが、というか……ああ、好きだ」
少し恥ずかしそうに顔を背ける。
だがそんなに恥ずかしがることはない。酒場でスイーツを頼む男性陣は多いのだ。常連達もよく頼んでいる。特にフルーツケーキが出た時は酒よりもご飯よりも先に出してくれと頼むほどだ。
「よかった。ご注文はお決まりですか?」
「ではAセットを」
「Aセットですね。かしこまりました」
伝票を記入し、キッチンにオーダーを通す。
その後すぐにやってきた常連達にもプリンを出すととても喜んでくれた。その際、聞いたリクエストをきっちりとメモに取るのも忘れない。
「お疲れ様でした~」
常連達を見送り、昨日と同じく裏口から出る。
外で待っていてくれた彼は「荷物を持とう」と手を伸ばしてくれる。
気遣いは嬉しいがヴェルデの荷物なんてポシェットくらいだ。このくらい自分で持てるとフルフルと首を振った。
けれどまっすぐに彼を見つめたまま。
働いている間、告げようと思っていた言葉があるのだ。