この恋心を悟られてはいけない

リオネルside

「なぁお前達、いつの間に付き合ったんだ?」
 いつものようにリオネルが酒場で食事をしていると、アンセルがやってきた。

 手には注文していた『ヴェルデのプリン』がある。彼女が運んできてくれると思っていたが、今は洗い物から手が離せないようだ。

 ここからでははっきりとは見えないのだが、今日も今日とて一生懸命働いている姿が愛らしい。

「何のことだ?」
「ヴェルデが付けているリボン贈ったのお前だろ。前までニーナが贈ったバレッタを付けてたのに。付き合ってるなんて聞いてないって荒れるニーナをなだめるの大変だったんだからな」
「付き合ってない。警護をしているだけだ」

 好意はあるが、それを表に出すつもりはない。
 リオネルがすべきは、ヴェルデに安心して暮らしてもらうことなのだから。自分が警戒対象に入っては元も子もないのである。

 受け取ったプリンにスプーンを突き刺し、甘めのカラメルを堪能する。
 だがアンセルはリオネルの返答に納得いかない様子だ。表情を歪め、立ち去る気配がない。

「……その警護対象にリボンを贈った理由は」
「買い物をしている時に見つけてな、以前母がアクセサリーはいくらあっても困らないという話をしているのを思い出した。アクセサリーも髪留めも似たようなものだろう」

 店の先に飾られたリボンを見た時、ヴェルデの顔が浮かんだのだ。
 そして母の言葉を思い出した。

「なんで黄色なんだ」
「色は何色もあったが、黄色のレースを編んでいたのを思い出してあの色にした」
「贈り物にも色にも他意はないと」
「あったら問題だろ」

 女性相手に贈り物をするのは軽率だっただろうか。
 だが彼女もレース小物を作っては食事の際に使っている。彼女が深い意味なく使用しているように、リオネルの行動にも深い意味はない。

 ましてや色なんて、相手に気に入ってもらえればなんでもいいだろう。

「黄色のアイテム贈っておいて、真顔で言い切るお前の方が問題だと思うがな」
「もしや嫌がっていたのか」
「嫌がってたら付けねえよ……」

 アンセルは大きなため息を吐き、キッチンに戻っていった。
 リオネルとしては変なことを言っている自覚はないのだが、贈り物なら直感的に選ぶのではなく真剣に考えた方がよかったのかもしれない。

 あまりにも直感的すぎた。だが真剣な贈り物など相手を困らせるだけ。
 このくらいの距離感がちょうどいい。

 リオネルはそう結論付け、再びプリンにスプーンを伸ばすのだった。
< 30 / 34 >

この作品をシェア

pagetop