この恋心を悟られてはいけない

 
「ねぇ恋人さん、今日も来てるよ」
「今日も一緒に帰るの?」
「私、昨日一緒に買い物してるの見ちゃった」

 いつからか、スタッフ達はヴェルデを見つけると喜々として話しかけてくるようになった。
 元より会話は多い方ではあったのだが、リオネルを恋人だと勘違いするようになってからは頻度が増している。

 ニーナに至っては、恨めしそうにリオネルを睨みつけている。
 せめて彼女にだけは事情を話しておきたいのだが、働く時間をずらしている関係でなかなか時間が取れずにいる。

 恋人と勘違いされる原因に思い当たる節はあるのだ。

 一つは、いつでも守れるようにと近い距離で歩いているため。警護のためなので仕方ない。
 そしてもう一つはヴェルデが悪い。彼からもらったリボンが嬉しくて、頻繁に付けているのだ。

 買い物中にコウルと彼の奥さんに会った時も、それはもう自分の娘が恋人を連れてきたかのように喜んでくれて、とても居心地が悪かった。

 その際、コウルが高い酒の意味を教えたからだろう。
 注文を受けたスタッフにバックマージンが入ることを知ったリオネルはこの日を境に、毎日のようにゴールドを注文するようになった。
 
 捜査協力のお礼のつもりなのか。
 ヴェルデは初めの発見以降、警護を付けてもらっているだけで何の役にも立っていない。それに頻度が高すぎる。

 ヴェルデとしては実家に仕送りできる金額が増えるのは嬉しいことであるが、お金は大丈夫なのか。常連が分けて飲むほどの量がある酒を頼んでいるのも心配だ。

 ついちらちらと確認してしまうのだが、毎回ちゃんと飲み干している。ただ酒が好きなのだろうか。家で飲んでいる姿は見たことはないが……。
 

 注文が入る度、ヴェルデは歌を歌う。
 リオネル以外にも酒を頼んでくれるお客さんはいて、最近は最低日に三曲歌っている。酒を入れてくれる客の中には担当スタッフにリクエストを聞き、その曲を歌ってほしいと頼む人もいるくらいだ。

 常連達はいろんな曲が聞けるからか、毎日上機嫌で帰っていく。リオネルもグラスを揺らしながら気持ちよさそうに聞いてくれる。
 
 歌う回数が増えれば、その分、給料は右肩上がりになっていく。
 給料だけ見れば、身体が清いままなのが不思議なくらいだ。弟の学費が貯まった今、自分がこの町に残る理由がない。
 
 それにこのまま店にいたら、ヴェルデはダメになってしまいそうだ。
 歌をメインに稼げることに対してではない。他の仕事にもやりがいはある。
 
 ただ、毎日リオネルと過ごしていると勘違いしてしまいそうになる。黄金の瞳に見つめられると、そのまま吸い込まれてしまいたいとさえ思うのだ。

 指先が軽く触れただけで、一日中そこに彼の熱が集まっているような気がして。無自覚に自分の手を眺めている。手入れしていてもすぐにガサガサになってしまう平民の手だ。
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