この恋心を悟られてはいけない
 初恋というものがこれほどまでに厄介なものだなんて夢にも思わなかった。
 再会しなければ小さな芽のままで終わらせられたのに……。

 リオネルはヴェルデの手が届くような人ではない。仕事で一緒にいてくれているだけだと頭では理解している。

 けれど気持ちは日々すくすくと育って蕾にまで成長している。
 このままでは日が当たらない場所で花を咲かせ、根腐れしてしまいそうだ。
 
 捜査が終わってからも思い出してしまうのだろう。
 ことあるごとにリオネルを思い出すのかと思うと自分が嫌になる。

 今だって皿を洗いながら彼のことを考えて憂鬱になる。

 こういう時は外の空気を吸うのが一番だ。
 チラリと視線を動かすと、ゴミ箱がこんもりと山になっていた。店裏に出しに行くだけだからちょうどいい。

「ゴミ捨て行ってきます」
「それなら後で俺が」
「すぐだから大丈夫ですよ」

 手を止める店長にそう軽く告げ、袋の口を縛る。両手に一つずつ大きな袋を持つ。両手が塞がっているため、裏口のドアに体重をかけるようにして開く。すると地面に大きな影ができた。

「やっぱり俺達は運命に愛されてるんだ。君と結ばれるのはあいつじゃない」
 顔を上げると、不気味に笑う男と目が合った。

「あなたは……」

 以前、『カナリアの唄声』をリクエストした客だ。だがあの時とは違い、目は虚ろである。それでいて酔っ払い特有のアルコール臭がない。

 一瞬で、この男が犯人だと理解した。

「覚えていてくれたんだね。俺も愛してる、ヴェルデ」

 抱きしめられ、頭に口付けを落とされた。気持ち悪くて怖くて、身体中に鳥肌が立つ。今すぐ助けを呼びたいが、声が出ない。

 いつ歌のリクエストが入っても声が出せるように練習していたのに。なぜこんな大事な時に出なくなるのか。

 怖さに悔しさが混じり、涙が出る。
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