この恋心を悟られてはいけない
「それでは聞いてください」
アンセルの伴奏に合わせ、ヴェルデは呼吸するように歌を紡ぐ。
『山の唄』は炭鉱夫の無事を祈る歌である。
コウルはヴェルデの父のように炭鉱で働いているわけではないのだが、今の仕事と通ずるところがあるらしい。また彼の故郷は国有数の炭鉱都市で、子供の頃から慣れ親しんでいる歌らしい。
この店に来てしばらく経った頃に教えてもらった。
店長に付き合ってもらって、開店準備前に何度と練習して。今では一番得意な歌でもある。
ヴェルデは身体を売らない代わりに、高い酒を入れてくれた時は歌を贈ることにしている。
歌を贈るのは、ヴェルデが最も得意とするものだから。
腕前はなかなかのもので、以前いた店では音楽担当として雇用されていた。
前に働いていた酒場は娼館ほどではないにしろ、かなり高級志向の店だった。
歌担当のヴェルデのようにピアノやバイオリン、チェロにビオラなど、幅広い楽器担当者がいたものだ。基本給もよかったが、チップもかなりの額で、実家への仕送りを少しでも増やしたいヴェルデにとってこれ以上ない職場だった。
だがとある事件がキッカケでオーナーが代わり、音楽担当は全員クビになってしまった。
数人はホールスタッフとして働かないかと声をかけられていたが、ヴェルデは誘われなかった。
どうしたものかと困り果てているところを、今の店長・アンセルに拾ってもらった。
彼は以前からヴェルデのことを知っていたらしい。歌姫として雇うことはできないが、身体は売らないホールスタッフでどうかとスカウトしてくれた。
拾ってもらった恩はもちろんある。
だがそもそも他のホールスタッフに薄給と呼ばれる給料は王都の平均よりもやや高めなのだ。弟の学費を稼ぐために出稼ぎに来ていたヴェルデにはありがたい話である。
申し訳なさでホール作業の他に裏方作業を手伝っていたのだが、その分も給料に色をつけてくれた。
仕事には相応の対価を。
それが店長の言葉である。
元々男娼として働いていた彼が言うと重みが違う。ヴェルデはありがたく受け取り、その分、しっかりと働くことで店に貢献している。
アンセルの伴奏に合わせ、ヴェルデは呼吸するように歌を紡ぐ。
『山の唄』は炭鉱夫の無事を祈る歌である。
コウルはヴェルデの父のように炭鉱で働いているわけではないのだが、今の仕事と通ずるところがあるらしい。また彼の故郷は国有数の炭鉱都市で、子供の頃から慣れ親しんでいる歌らしい。
この店に来てしばらく経った頃に教えてもらった。
店長に付き合ってもらって、開店準備前に何度と練習して。今では一番得意な歌でもある。
ヴェルデは身体を売らない代わりに、高い酒を入れてくれた時は歌を贈ることにしている。
歌を贈るのは、ヴェルデが最も得意とするものだから。
腕前はなかなかのもので、以前いた店では音楽担当として雇用されていた。
前に働いていた酒場は娼館ほどではないにしろ、かなり高級志向の店だった。
歌担当のヴェルデのようにピアノやバイオリン、チェロにビオラなど、幅広い楽器担当者がいたものだ。基本給もよかったが、チップもかなりの額で、実家への仕送りを少しでも増やしたいヴェルデにとってこれ以上ない職場だった。
だがとある事件がキッカケでオーナーが代わり、音楽担当は全員クビになってしまった。
数人はホールスタッフとして働かないかと声をかけられていたが、ヴェルデは誘われなかった。
どうしたものかと困り果てているところを、今の店長・アンセルに拾ってもらった。
彼は以前からヴェルデのことを知っていたらしい。歌姫として雇うことはできないが、身体は売らないホールスタッフでどうかとスカウトしてくれた。
拾ってもらった恩はもちろんある。
だがそもそも他のホールスタッフに薄給と呼ばれる給料は王都の平均よりもやや高めなのだ。弟の学費を稼ぐために出稼ぎに来ていたヴェルデにはありがたい話である。
申し訳なさでホール作業の他に裏方作業を手伝っていたのだが、その分も給料に色をつけてくれた。
仕事には相応の対価を。
それが店長の言葉である。
元々男娼として働いていた彼が言うと重みが違う。ヴェルデはありがたく受け取り、その分、しっかりと働くことで店に貢献している。