この恋心を悟られてはいけない
「じゃあ行ってきます〜」
 掃除用具を手に、二階に上がる。回収したタオルを入れるための籠は廊下に置いておき、その中にポンポンと入れていく。
 
 慣れた調子で部屋の清掃・チェックを行う。足りない備品があれば補充しつつ、いよいよ最後の部屋のドアノブに手をかける。

 このまま何も見つからなければ、残りの時間はひたすら雑巾を縫うことになるのだろう。回収したばかりのタオルは籠に山積みになっており、店長と二人で縫ってもしばらくかかりそうだ。

「雑巾縫いで終わりますように……」
 祈りを込めて部屋に踏み込む。

 パッと見た感じだと他の部屋と変わらない。だがこの部屋は別だ。先ほど確認した資料にこの部屋と利用者に関する記載があった。

 ヴェルデ自身、彼女には少し気になるところがある。部屋に入り、真っ先にクローゼットを開く。
 
「今回も服がなくなってる」

 セッティング係の重要な役目として、女の子の着替えがちゃんと用意されているのか確認するというのがある。いくらそういう店とはいえ、汚れた服で店に立たせるわけにはいかず、着替えを忘れたスタッフ用の服が部屋に常備されている。

 ちなみにアンセルの強いこだわりにより、全てデザインやシルエットが異なる。
 買い取りにはなるものの、可愛い系・セクシー系・クール系と幅広いジャンルに対応している上に店で買うよりもウンと安いことから、スタッフからの評判もいい。

 普段使いできるのもありがたい点である。ヴェルデも配膳中に服が汚れてしまった時は利用させてもらっている。

 服代は給料から天引きされるため、使用後は申請が必要となる。申請忘れや意図的に申請をしない子も一定数いる。といっても部屋の使用記録が残っているため、備品チェックの際に必ずバレるのだが。
 
 今回の場合は確信犯だろう。
 渡された資料にも前科が書かれていた。
 
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