この恋心を悟られてはいけない
「これで七回目か……多いなぁ」
 
 二か月前に入ったばかりの子なのだが、よほど金に困っているのか初めのうちは着替えを使うことすら渋ったほどだ。

 ならばと着替えを持ってこさせたが、どれも着古されたものばかり。
 そのままなら店に出せないとまで言われ、ようやく着替えを使うようになったと思えばこれだ。
 
 通常、二か月もこの店で働いていれば服代に困ることはない。ヴェルデが知っているだけでも彼女には固定客が何人もついている。基本給以外もそこそこ稼いでいるはずだ。
 
 それに毎回用意された服を着なくてもいいのだ。
 初めの数回だけ利用し、それを着回せばいい。注意される際、この提案も一緒にされていたはずなのだが何か事情でもあるのだろうか。
 
 彼女は他のスタッフとの交流を避けており、ヴェルデも彼女のことをほとんど知らない。渡された資料にも詳しいことは書かれていない。あるのは意図的な申請隠しをしたと思われる記録だけ。
 
「最近何かが盗まれたって話は聞かないけど、気づいてないだけのケースも結構あるからなぁ」
 
 店の特性上、お金に困っているスタッフも多い。
 ほとんどのスタッフは真面目に働いて稼ぐのだが、ごく稀に別の手段に手を染める者がいる。
 
 ホールスタッフの私物を盗み、客に高値で売るのである。
 その他にも、バックヤードにいるホールスタッフの様子を描いて売っていたこともあった。金額を積めば好きな服装やポーズを描いてくれるサービスまでしており、店長は他のことに活かせばいいのに……と呆れていた。
 
 ちなみに後者は今、店公認のサービスになっている。
 知らない間に行われているから問題なだけで、意外にもモデルにされた側も乗り気だったのだ。店の取り分は不要だが、彼女達の許可を得ること・売り上げの二割をモデルにバックすることで落ち着いた。公認になったことで、堂々と巨大な絵を頼む客も出てきた。店にも何枚か飾ってある。
< 9 / 34 >

この作品をシェア

pagetop