夜だけ、わがまま聞いて?

夜は私を愛してくれる人

カチャリ、と静かな部屋に鍵の閉まる音が響く。それが、2人だけの秘密の時間の合図。
「……愛李栖。やっと、触れてもいい時間ですね」
振り返ると、そこに昼間の冷徹な『執事・瀬名律』はもういなかった。
黒いジャケットもネクタイも床に脱ぎ捨てられ、白シャツのボタンを胸元まで開けた律が、少し潤んだ、熱い目線で私を見つめている。
ベッドに腰掛ける私の前に、律はゆっくりと、跪くようにして近づいてきた。
大きな手が、私の頬を包み込む。昼間の白い手袋越しではない、直接触れる彼の肌は、驚くほど熱い。
律の低く掠れた声が耳元で跳ねて、背中に甘い鳥肌が立つ。
昼間はあんなにポーカーフェイスなくせに、2人きりになると、律は子供みたいに独占欲を隠そうとしない。
「……夜だけは、俺のわがまま、全部聞いてください」
切なそうに、でも逆らうことを許さない強さで、律の唇が重なった。
一度、二度。愛おしさを確かめるように、何度も、何度も場所を変えて重ねられる、深く熱い口づけ。
「ん……っ、りつ……」
名前を呼ぶと、律の喉が愛おしそうに鳴る。
唇が離れたかと思えば、今度は首筋、鎖骨へと、焦らすように熱いキスが降りていく。
律の大きな手のひらが、私の華奢な身体を包み込み、ゆっくりとベッドへと押し倒した。
上から覆いかぶさる彼の体温と、男らしい体格の重みに、心臓がハチ切れそうになる。
「愛李栖、もう我慢できません……。全部、俺のものにさせて」
汗で濡れた前髪の隙間から、野生のケダモノのような瞳が私を捉える。
触れ合う肌が火傷しそうなほど熱くて、2人の境界線が溶けていく――。
このあとに始まる、夜が明けるまで何度も愛を確かめ合う濃密な時間の予感に、私はただ、律の背中にきゅっと爪を立てることしかできなかった。
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