王子様は私に夢中
しばらく経った頃…。
たまに午前中に呼ばれる剣術練習に私も呼ばれた。
「おお!約束通り連れて来たな!お前がネルカのお気に入りか…。ふーん。」
ネルカさんが私の前に立ち、ラルゴさんから私を隠した。
「約束通り連れて来たよ。もう良いだろ?」
「じゃあ次は…次の勝負は、その女にしようか?ネルカ!」
「どういう事ですか?」
「ははっ。何も言って無かったのか!?だろうな。剣術練習でコイツは一度も俺に勝てない。いつもその時の『お気に入り』を賭けて俺が頂いてるんだが…。初めて女が出てきたなぁ。コイツが気に入ってる女…。ふふっ。どんな味がするんだろうなぁ…。」
「どんな味って…。そういう関係じゃ無い!世話係だ。だから居ないと困るんだ。」
「そんなのどうでも良いんだよ。取られたくなければ勝てば良い話だろ?」
明らかラルゴさんの方が有利だ。
見た目から運動部と文化部みたいな雰囲気だし…。
「すみません!これはずっと剣術で勝負してるのですか?」
「あぁ。そうだ。」
「ネルカさ…ネルカ様は運動は苦手だと思いますので、今度の勝負はネルカ様の得意な事で勝負されてはどうでしょうか?ラルゴ様もそれで勝った方がカッコいいと思いますが…。」
「は?」
「だって、自分の得意分野ばかりで、相手の苦手な事で戦って勝ったと今はそんな感じにお見受けできます。弱い者イジメをしているような…。でもネルカ様の得意な事で勝つんだったら、誰もが納得します。」
「お前…。俺達に意見するとは…。あぁ。そうか…。お前が…召喚者…。良いねぇ。欲しいねぇ。わかった!良いぜ。お前の得意な事で勝負だ。賭ける物はお前。俺からは…。この女を出す。コイツは締まりが良くて気持ちいいぜ。最近のお気に入りだ。」
「そんなのいらない!」
「何を喧嘩しているんだ?」
そこへ割って入って来た優しそうな男の人…。
「おぉアイリス!コイツと賭けをしようと思ってな。でもコイツ乗って来ないんだ。」
一部始終を聞いてアイリスさんが頷きネルカさんを見た。
「ネルカ。男同士の勝負は申し込まれたら受けないと…。だったら…。私もそれに乗らせてもらおうかな?」
「アイリス兄さんまで…。」
「3人で争って順位を付けよう。俺が勝ったら、その子を連れて、今度のパーティーに参加する事。ネルカが勝ったら、こういうパーティーに出なくて良いようにしてやる。どう?」
「………わかった…。」
「俺が勝ったらその女を貰うからな!」
「負けない…。」
「よし!じゃあ、始めよう。クリス!問題を作って出して得点を付けてくれ。」
10問のテスト…。
3人が解いている。
そして…。
「一位はアイリス様。二位はネルカ様。三位ラルゴ様です。」
「やったね。私が一位。では、ネルカ。次のパーティーには参加する様に。楽しかったよ。君も。次のパーティーでね。」
なんて紳士な人だ。
私は礼をすると、ニコッと笑って私の頭を撫でた。
「もう行くよ。」
感心して見ていると、ネルカさんが私の手を掴んでズンズンと歩いて小屋に戻った。
小屋に入ると、ネルカさんは私の肩を掴んだ。
「アイリス兄さんの事、良いなって思った?思ったよね?優しいし、剣術は出来るし、頭も良い。惚れた?ん?兄さんの所に、行きたいって思った?させないよ。だって、お前は僕のだから…。」
いつもやる気が無く、ここにいる時だけ楽しそうにしているネルカさんのこんなに感情が出ている所を初めて見た。
「惚れてません。優しそうで紳士な方だなとは思いましたけど…。別にそちらに行きたいとか無いです。もし、行ったとしてもネルカさんの事が、色々と心配で気になります。」
「本当?」
「はい。」
「なんだ…。良かった…。ん?良かった?なんで?何で僕は良かったって思ってるの?この気持ちは何?アイリス兄さんと澪が話してるの見てると、すごく嫌な気持ちになった…。初めての感覚だ。取られたくない気持ち…。調べて…。仮説立てて…。」
ブツブツ言い出したネルカさんは、私から離れて、紙に何か書き始めた。
しばらくすると、また液体を混ぜたり、熱したり実験のような事を始めた。
ネルカさんはいつも何かの実験をしている。
一体、何の実験をしているのだろうか?
「ネルカさん。ネルカさんは何の実験をしているんですか?」
「んー?あぁ。これ?これはね、干ばつになった所でも生える木の実験。」
「え?」
「街…最近、干ばつが酷いから…。もし干ばつが防げたら、皆、助かるでしょ?」
「ネルカさん…っ。」
私は、ネルカさんの頭に手を置いてわしゃわしゃと髪の毛を乱した。
「えらい!えらい!」
「ちょっと!何!?」
「やっぱり国を守る人だね!」
「今更、何?当たり前でしょ。」
「私も手伝います!」
「うん。ありがとう。じゃあ、それ取って。」
私は、言われるまま、ネルカさんの実験を手伝った。