王子様は私に夢中
しばらくしてアイリスさんが言ってたパーティーの日になった。

とても綺麗なドレスを着せてもらい、化粧を施してもらった。

「これ。良いんですか?私、使用人なのに…。」

「良いんだよ。僕のパートナーとして出るんだから。」

なんかドキドキしてきた。

パーティーに出ると、たくさんの着飾った人達が談笑したり、中心で踊ったりしている。

映画の中みたい…。

「僕と踊って頂けますか?」

私の手を取り跪き私の甲にキスを落とすネルカさんが綺麗過ぎる。

「は、はい…っ。」

私がそう言うと、ネルカさんは私の手を引き中央に連れて行かれて身体が密着した。

「あの…っ。私、勢いで『はい』って言っちゃったんですけど、踊り方全くわかりません。」

「知ってる…。男が跪いて誘っているんだ。断るのはかなり失礼な事だ。僕の首に手を回して?…そう…。」

「密着し過ぎじゃないですか?」

「そう?当たり前だろ?これくらい…。」

どう動いたかも、わからないまま曲が終わった。

ダンスフロアから離れると女性がネルカさんに群がって来た。

「ネルカ様がこのパーティーに来られるなんて珍しいわ!私と踊って下さいませ。」

「やだ!私よ!私と踊って下さいませ。あちらの家より私の方が格式は上ですわ。ねっ。ほら!」

「ちょっ…っ。止めっ…っ。t

ネルカさんは、アグレッシブ女子に連れて行かれた。

私はその光景を見送っていると背中から大きな歓声が聞こえた。

振り向くとアイリスさんが目の前にいた。

「え?」

「やぁ。来てくれたんだね。」

アイリスさんは私の手を取り跪いた。

周りからキャーッと悲鳴が聞こえる。

「美しい姫。どうか私と踊って頂けますか?」

断ったら失礼なんだよね?

「お、お願いします…っ。」

私は、アイリスさんに手を引かれてダンスフロアに戻った。

「さぁ。手を。」

私は、先ほどネルカさんに教えてもらった通りアイリスさんの首に腕を回した。

「っ!……ふふっ。積極的だね?」

「えっ?ネルカさ…ネルカ様に教えてもらったんですけど…。」

「そうか…。ネルカは策士だね…。くくっ。澪だったかな?他の男には、してはいけないよ。」

「はい。」

「ところで、ネルカはどう?何か言われたりされたりした?」

何のこと?


「いいえ。いつもと同じですが?」

「そうか…はぁ…。じゃあ、可愛い弟の為に私が一肌脱ごうか…。ちょっとごめんね?」

「えっ?…っ!」

アイリスさんが私の口の横の頬にキスをした。

「キャーッ!!!」

ゆっくりとアイリスさんが顔を離すと私の頬を撫でた。

「また後で…。」

「え?」

アイリスさんが私とダンスフロアから離れると、すぐにネルカさんが側にやって来て、私の手を引いた。

「アイリス兄さん、約束通りパーティーには参加した。もう俺達は帰るから。」

「あぁ。良いよ。またね。2人とも。」

「あ…っ。ちょっと!ネルカさんっ!」

ネルカさんは引きずる様に私の手を引きその場を離れた。


パタン。

ドンッ。

私は、ネルカさんに壁に追いやられて顔の横に手を置かれて、反対側は手を握られて逃げれない。

「ねぇ。あれ何?アイリス兄さんの首に手を回してさぁ…。媚びてんの?そりゃ第三王子より第一王子の方が良いもんね…。惚れてんだろ?前に会った時?…やっぱり惚れてた?ん?」

「違っ!」

「じゃあ、なんでキスしてんの?」

「してません!」

「は?嘘つかなくて良いよ。近くで見てたんだから…。」

「だから、してませんって!ギリギリほっぺたでした!」

「は?頬でもしてるじゃないか。」

コンコンコン。

ドアをノックされる音で口論が中断した。

「失礼します。澪様。アイリス様の所に行ってください。」

「は?なんで?コイツなの?」

「アイリス様がお呼びです。」

「は?だって兄さんには、夫人がいるじゃないか!」

「はい。アイリス様が澪様と話をしたいとの事です。」

「断る!」

「アイリス様は次期国王様です。その方の命令は絶対なのです。」

「っ!」

私は、カルファさんに連れられて、お風呂に入れられて、薄い透けたドレスを着せられて、別棟の大きなドアの前で止まった。

「失礼します。澪様をお連れしました。」

中に入ると、アイリスさんがソファに座り飲み物を飲んでいた。

「やぁ。また会ったね。」

「あの…。」

「カルファ、ありがとう。もう良いよ。」

カルファさんが頭を下げて部屋を出て行った。

部屋に2人きり…。

ゆっくりとアイリスさんが立ち上がり、私に近づいて来た。

「あの…。」

「ネルカが初めて好きになった女か…。澪…。こちらへ。」

手を引かれてソファに座らされた。

「あの…。私…無理です!」

「え?……っぷ。くくくっ。はははっ。こんな女がいるのか…。そうか…。だからネルカが、こんなにも執着しているのか…。なるほど。」

「どういう事ですか?」

「ん?私から夜伽に誘われたら、皆、大喜びして、私の子種を欲しがるんだが…。どうやらお前は違うらしい。」

「そんなのいりません!って失礼ですね。すみません。」

「いや。良いよ。さて…。私はね、ネルカの為に君をここに呼んだんだ。」

「ネルカさんのため?」

「そう…。ネルカがいつまでも君と進展しないから…。でも…。色んなしがらみが重なって、いつの間にか、ネルカは諦めるような性格になっちゃったんだ。今回もそう…。私に呼ばれたからと君を私に差し出した。」

「でも…。アイリス様の身分の方が上なら仕方ないのではないですか?」

「確かにそう…。でもね。男にはどんな事があろうとも譲ってはいけない事もある。それが、大事なものなら尚更だよ。だから…。私に…俺に言われたから、君を諦めて差し出すのなら、俺は君を貰うよ。」

「貰うって…?」

「君を第二夫人に迎える。」

「へ?なんで?」

「ははっ。可愛いね。んー…なんでと言われると…。気になるから?」

「気になる?」

「そう。気になる…。召喚者だからかな?ここの常識と異なる考えを持っていて話してると面白い…。」

「私は何も面白く無いです。緊張するし…。」

「ははっ。そうだね…。そうだ!召喚者から見たこの国はどう?」

「言って良いのかわかりませんが…。干ばつが酷く作物が取れていない。なのに税金はそのままで…。それだと国民は不満が募っていくと思うんです。前に街に行った時になんとかして欲しいみたいな事言ってたし…。」

「なるほど…。処置は必要かもしれないな…。あとはネルカの緑化計画がどのくらい進展しているか…。」

「ネルカさんの研究の事、知ってたんですか?」

「ん?あぁ。次期、国王として当たり前だよ。」

「すごいです。きっとアイリスさんが国王になられたら良い国になりますね。」

「そうなるよ。絶対にそうなるようにする。」

「はい。楽しみにしています。」

「ふふっ。やっぱり君は面白い。他の女だったら…世継ぎだと真っ先に出てくるのにね…。」

何かボソボソと話すアイリスさんが私の頭を撫でた。

「え?何ですか?」

「ううん。何でも無いよ。でも…。ネルカを応援するつもりで、今夜の夜伽を設けたが…。来なかったら…。俺のモノになってね。」

「恐れ多いです!無理です!」

「ははっ。君って人は…。本気だからね?」

「あの…。アイリス様には奥様がいるんですよね?」

「あぁ。政略結婚した夫人がいるよ。」

「その方を大事にしてください。他の女の人とだなんて…。」

「国王になる者が1人の女だけ娶るのはあり得ない。でも…。澪…お前なら…お前が夫人として来るなら…1人にしても良いが?」

「いえ…っ。え、遠慮しておきます。」

「くくっ。これでもダメか…っ。ふふっ。くくっ。はははっ。」

何がおかしいのかツボにハマったアイリスさんがお腹を抱えて笑っている。

「あの…。」

「フラれたのも初めてだが、こんなにも相手にされないのも初めてだ。面白い…。大事な弟の為にと思ったが…ネルカに渡すのが、惜しくなってくるな…。」

ジッと見つめられて動けない…。

見つめ合っていると、廊下が騒がしくなり、ドアが荒々しく開く音がした。

バンッ!

「澪っ!!!」

「ネルカさん?」

「ネルカ、無礼だそ?」

「わかってる…。わかってるけど…っ。コイツが…澪が…アイリス兄さんのモノになるのは耐えれない。コイツは俺のだから…。悪いけど、連れて帰る。夜伽の相手が欲しいなら他の女にいってくれ。行くぞ。」

私の手を掴み部屋を出ようとした私達に、アイリスさんが声をかけてきた。

「ネルカ!俺も澪の事を気に入った。もし、澪が泣いて辛い想いをしたら、いつでも俺は澪を貰う。そのつもりでいろよ?」

「っ!させない…。絶対に…。失礼します。」

部屋を出る瞬間にアイリスさんが微笑んで手を振ったのが見えた。

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