王子様は私に夢中
そんな日が続いたある日、私は国王に呼ばれた。
どうしよう…。たぶらかしたとか、言われる?
私は頭を出来るだけ低くしてお辞儀をした。
「良い。顔を見せろ。」
恐る恐る顔を上げると、優しそうな国王が私を見つめている。
「アイリスより、以前からそなたの事は聞いていた。あのネルカが執心している女がいると…。そして、しばらく様子を見ていたら、四六時中一緒にいると聞いている。ネルカの妻になりたいか?」
「え…と。わ…わかりません…。」
「わからない?でも毎日夜も昼間も関係なく子作りをしているそうではないか。」
知られてるの恥ずかし過ぎるよ…っ。
「し、していますが…。ネルカさん…じゃなくて、ネルカ様の事は好きです。でも結婚したいくらい愛してるのかは、わかりません。私は召喚者で…。向こうの世界に帰れるとなった時、それを捨ててネルカ様の隣にいると答えれるのか自信がありません。」
「なるほど…。今まで異世界に帰った者はいない…。そしてワシはネルカに嫁を娶らせたい。申し訳ないが、国王の権限を使う。国王である私から命ずる。ネルカと婚姻の儀を行うように。ネルカは、なかなか人に心を開かない。それをお前がこじ開けた。なので、これからネルカの事はお前に預ける。」
「預ける?ですか?」
「あぁ。この城内で、アイツの手綱を引けるのはお前だけだ。よろしく頼んだ。」
「でも、私…。」
「これを受けれないなら打首だな。王の権限を使用するまでだ。そして、受けるなら何でも褒美を遣わす。」
「そんな…。」
死ぬなんて絶対嫌…。
受けるしか無い。
「わかりました。謹んでお受け致します。」
「おぉ。そうか…。礼を言う。では、褒美は何が良い?」
「えー…っと。それじゃ…。今、雨が降らず、田畑は荒れて、街の皆さんが、食べるものが無く困っています。なので…。もし在庫があるなら減税して欲しいです。」
「お前!女の分際で国政に口を出しおって!!」
そう怒鳴ったのは、大臣らしき人。
「良い!良いのだ。澪は、ネルカの妻を引き受けてくれたのだ。何ならお前、ネルカの嫁探しをするか?」
「ネルカ様の嫁探し…。無理だ…。申し訳ありませんっ!澪様どうかご無礼をお許しください。」
「い、いえ…。」
そんなにネルカさんの嫁探しって大変な仕事なの?
「澪よ。承知した。早急に税を下げるかもしくは無くそう。それにしても、お前は…。なんとなくネルカやアイリスがお前の事を気に入ってるのがわかる気がする。あと…気になるのは、アイリスだ。アイツもなかなか人に心を開かない。なので、澪、ネルカの第一夫人とアイリスの第二夫人の兼任を命ずる。」
「え?アイリス様も!?」
「あぁ。アイリスは他国との関係で嫁を娶ったが、全く子供が出来ない。お前となら出来そうな気がする。世継ぎは国の存亡が関わる事。子は多い方が良い。それにアイリスは第一王子。頼んだぞ。澪。」
「そんな…。」
今の言い方、私にアイリスさんとの子供を産めって事?
ネルカさんと結婚するのに?
おかしくない?
アイリスさんには奥さんいるのに?
私は困惑したまま部屋に戻ろうとすると、先ほどの大臣が呼び止めた。
「澪様。そちらではありません。こちらへ。」
豪華な装飾の部屋に案内された。
「こちらが今から澪様のお部屋になります。今日から貴方様は、ネルカ様の第一夫人とアイリス様の第二夫人となりますので夜伽など、どうするのかこれから決めて頂きます。今からお二人がここに来られます。少々お待ち下さい。」
2人が部屋にやって来た。
少し嬉しそうな顔をしているアイリスさんとは対照的にネルカさんは、複雑そうな顔をしていた。
「澪…。ネルカの為を思って諦めてたが、私…俺にも幸運が舞い降りた。これからよろしく頼む。」
「正直、澪と結婚の許可が出たのは、嬉しい…。でも、アイリス兄さんの第二夫人は嫌だ…。形だけでいいんでしょ?」
「いや、俺は澪が第二夫人になってくれて嬉しい…。愛おしく想っている。お前には悪いが、俺の中での1番大切な女になる……。では、7日のうち交互で1日ずつ澪と過ごす。最後の1日は3人で過ごすというのはどうだ?」
「いや…。1日は1人の時間を…。」
「はぁ…。くそっ。わかった。じゃあ1、3、5日はアイリス兄さんで、2、4、6日は僕。7日目は2人で良い?」
「あぁ。婚姻の儀の日と第二夫人の儀までは、色々準備がありなかなかお互い会えないだろう。次会えるとしたら、家族への紹介の日だ。」
ネルカさんが私を抱きしめた。
「本当は…、嫌だ…。でも…兄さんとお前を共有しないと婚姻の儀をしてはダメと言われた…。だから我慢する…。僕の子を早く宿して…。」
ネルカさんが離れると、アイリスさんが、私の手を取り、耳元で囁いた。
「俺も…。抱きしめたいが、いきなりだと君が驚くだろ?だから触れるのは、夫人の儀を済ませたら思う存分、触れさせてもらう…。」
ゆっくり顔を離すと、色っぽいアイリスさんの顔が間近にあり、心が跳ねた。
そして、今日は2人とも部屋から出て行った。
久しぶりの1人。
音が無い…。
少し寂しさを感じたが、緊張の疲れからかすぐに寝てしまった。
それから私は、ネルカのお嫁さんになる為の修行を受けていた。
テーブルマナーや歩き方などの作法を必死に覚えた。
確かにネルカを見てても動作が綺麗だ。
私が出来ないという事は、ネルカやアイリスさんに恥をかかせてしまう。
皆、家柄などある中で、召喚者という人間を娶るのだから、それだけで話の種になってしまう。
私のせいで2人が笑われてしまうのは嫌だ。
私は必死で覚えた。
あの日から2人とは一度も会ってない。
次会うのは家族が揃うお披露目の日、そしてその日までにマナーなど完璧に覚えないといけない…。
最初は、指がつり、全身、筋肉痛になり動けない日もあったが、段々と慣れてきた。
意識しなくても姿勢なども保てるようになった。
そして、家族のお披露目会の日があっという間に来てしまった。
私は綺麗なドレスを着せられて控え室にいた。
そこへネルカさんとアイリスさんがやって来た。
「っ!」
「…。綺麗だ…。婚姻の儀が楽しみだ。」
「……綺麗だよ…。さぁ、行こっか。」
右にネルカさん、左にアイリスさんが立ち両方の腕に手を回した。
そしてドアが開くと1番奥に国王様と第一夫人から第四夫人まで座っていた。
そして、多分アイリスさんの第一夫人、
ラルゴさんと4人の夫人、初めて見る多分王子の2人には2人ずつ女性が座っている。
多分、第二夫人が2人ともいるのだろう。
「やっとこの日が来た。やっとネルカに第一夫人が…。それにアイリスにも。堅苦しいのはいい。皆、この子の名前は澪だ。ラルゴは会ったと言ってたな?」
「はい。いつも俺の誘いに乗って来ないネルカが澪の時だけ反抗しました。ネルカはご執心ですよ。間違いない。」
「そうか。それから右にいるのが第四王子のサオンに左が第五王子のアリーだ。」
「よろしくお願いします。」
「ネルカ兄さんの第一夫人とアイリス兄さんの第二夫人…。エラい人達に捕まったね。子猫ちゃん。」
「本当だね。何だか面白くなりそう。」
怖い事言ってる…。
そして緊張しすぎて何の味もしなかった食事が終わり夫人だけの集まりが始まった。
「澪。皆先輩なので何かわからない事があったら何でも聞いてくれて良いわ。あとアイリスの第一夫人のマリーとはちゃんと話しておきなさい。」
「はい。よろしくお願い致します。」
「この後、少しお時間よろしいかしら?」
「はい。」
怖いよ…。
「ところで…。婚姻の儀をするのに、どんな褒美を頂いたの?」
「私の時は、この宝石の付いたネックレスを頂いたの。私をイメージして作ってもらったのよ。」
「とても綺麗ですね。よくお似合いです。」
「私はこの指輪。当時手に入らないと言われた宝石で作ってもらったの。で、貴方は?」
「国の税の引き下げをお願いしました。」
「は?何それ…。貴方…。女のくせに国政に興味あるの?」
「いえ…。そういう訳では…。」
「さすがネルカさんの第一夫人になるだけあるわ。ご高尚な褒美ですこと。」
バカにされてるのはわかる。
一応、全員、自己紹介してもらい、何を褒美に貰ったか聞かされたが何も覚えていない。
そしてお開きになった。
私とマリーさんだけが部屋に残った。
嫌だよね。普通。
「私はアイリスの事、嫌いなので貴方が子供を産んでね。まぁ、無理だと思うけど。あんな何、考えてるかわからない奴…。しかも男として役立たずだしね。」
「え?」
「私には愛し合ってる人がいるの。今日は絶好の日。」
すると1人の男の人が入って来た。
アイリスさんとは対照的にムキムキの大男だ。
「密会するのが大変なの。貴方ここにいてくれる?私達が愛し合ってる間、ここにいて?」
「いえ…。あのご迷惑になるかと思いますので退室致します。」
「貴方バカね。貴方と話しているって事で1人になれてるんだからいてちょうだい。そちらの部屋にいて?」
すると2人はベッドで絡み合い始めた。
嘘でしょ?
私いるんだけど!
私は隣の部屋に移り2人の遠吠えのやうな嬌声を聞かされ続けた。
アイリスさんは、この事を知ってるんだろうか…。
2人の関係が冷え切っているのはわかった。
子供が出来ない訳だよね…。
そして数時間後、やっと2人の情事が終わった。
「ありがとう。終わったわ。まだまだし足りないけど、これ以上は貴方といると不審がられるだろうし、私たちは、別の所に行くわ。あ…アイリスの事よろしくね。あの人、ヤバいから。貴方、召喚者なんでしょ?本当はあの人、最初から貴方が欲しかったみたいよ。あの人に狙われるなんて…。可哀想。ふふっ。私はどうすることも出来ないから。じゃあ、よろしくね。」
そう言うと、2人は出て行った。