あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
街には何軒もの菓子店があり、皆、その日のおやつに好きな店のものを選んで買う。近いうちに、エルニーナにも一押しの菓子店ができるのではないかと思っている。
「エルニーナ!」
どこからか名前を呼ばれて、エルニーナはきょろきょろとした。辺境伯領では、エルニーナの名を呼び捨てにする人はいない。
それに、名を呼ぶ声には聞き覚えがある。
「こっちこっち! ねえ、気づいてるんでしょ?」
「ソリン? なんで、ここに?」
振り返ってみると、乗っていた馬車を停めたらしいソリンが、こちらに向かってぶんぶんと手を振っていた。顎の線で切りそろえた黒髪が、動きに合わせて揺れる。
「なんでじゃないわよ! あの手紙を読んで、黙っていられるわけないでしょう!」
大急ぎでこちらに駆け寄ってきたソリンは、息を乱しながらも一息にそう言いきった。
「あなたがあんなに愚痴をこぼすなんて珍しいのに」
「でも、どうして」
「ほっとけないしぃ」
だけど、と口にしかけてエルニーナは口を閉じた。
「だから来たの。私がいれば、助かるでしょう? 記録の管理は任せて」
「……でも、王宮の仕事は」
「辞めちゃった!」
「エルニーナ!」
どこからか名前を呼ばれて、エルニーナはきょろきょろとした。辺境伯領では、エルニーナの名を呼び捨てにする人はいない。
それに、名を呼ぶ声には聞き覚えがある。
「こっちこっち! ねえ、気づいてるんでしょ?」
「ソリン? なんで、ここに?」
振り返ってみると、乗っていた馬車を停めたらしいソリンが、こちらに向かってぶんぶんと手を振っていた。顎の線で切りそろえた黒髪が、動きに合わせて揺れる。
「なんでじゃないわよ! あの手紙を読んで、黙っていられるわけないでしょう!」
大急ぎでこちらに駆け寄ってきたソリンは、息を乱しながらも一息にそう言いきった。
「あなたがあんなに愚痴をこぼすなんて珍しいのに」
「でも、どうして」
「ほっとけないしぃ」
だけど、と口にしかけてエルニーナは口を閉じた。
「だから来たの。私がいれば、助かるでしょう? 記録の管理は任せて」
「……でも、王宮の仕事は」
「辞めちゃった!」