あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
にこにことしながら、ソリンは両腕を広げる。辞めちゃったって、そんな気軽に言っていい言葉ではない。
「出しちゃった、辞表」
エルニーナは、口をぱくぱくとさせてしまった。
ソリンは要領がよく、食堂でしょっちゅう愚痴をこぼしながらも上司とうまくやっていた。衝動的に辞めるような人ではないはずだ。
「……ソリン、なんで、あなた、そんな思い切ったことを」
「私も、いい加減うんざりだったのよ。王宮じゃ、私やあなたみたいな人って、軽く扱われがちだし」
ソリンの言うとおり、エルニーナ達の王宮での立場は弱い。役人として出仕していても、優先されるのは男性。そして、身分が上の者だ。
男爵家の娘であるエルニーナやソリンの言うことに、上役が聞く耳を持たないのも当然のこと。そのわかりやすい例がステファノだ。
「でも、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だから来ちゃった」
ソリンが乗ってきた馬車に同乗させてもらって、屋敷へと戻る。
きちんと両親に話をしてからこちらに来たそうだ。となれば、エルニーナとしてもこれ以上言うことはない。