あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 手がかじかむのはどうしようもない。手をこすり合わせて、少しでも手を温めようと試みる。口から吐き出した息は白かった。

(魔石の予備はまだある。でも、食料が足りなくなりそう……特にパン。野菜はまだ乾燥野菜があるからいいけれど)

 肉は、騎士達が討伐した魔物の肉と干し肉で賄っている。こちらはまだもう少しもちそうだ。

「エルニーナ嬢、遅くまですまないな」

 一人執務室に残っていたら、ドラヴェンがやってきた。
 彼は、避難民達の間に積極的に入っていって話を聞いている。辺境伯自ら相手をすることで、ピリピリしていた空気が少しは柔らかくなるらしい。

「在庫はどうだ?」
「そろそろ、制限しないといけないかもしれません……私の食べる分を減らせたらいいんですけど」

 と、苦笑い。
 エルニーナ一人の食べる分を減らしたところで、そう大きな影響があるわけではないというのも理解はしていても、みるみる減っていく在庫を見ていたらそう言いたくもなる。
 魔石ランプの明かりの中で、彼が表情を変えた。申し訳なさそうに見えるのは、気のせいだろうか。

「まだ、ここにいるか?」
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