あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 黒い髪、黒い目。戦いに身を投じている男性らしく、身体は鍛え上げられているのがここから見ていてもわかる。自分の意志をしっかりと持っている人に見えたが、往々にしてこういう人物は目下の者の意見には耳を貸してくれないことが多いのを、エルニーナは今までの王都の経験から知っていた。

「経験不足だとお思いですか?」

 もしかして、女性は女性でも、経験豊富な役人が来ると思っていただろうか。
 それなら、期待外れで申し訳ない。とはいえ、エルニーナにはここに来ないという選択肢はなかったわけだが。

「いや、失礼した。この通り、こちらでは手が足りていない。父上――ああ、養父だが――も奮闘はしていたが、まだこの地で役人を育てるところまではいっていないんだ」
「働かせていただけるのであれば、問題ありません」
「よろしく頼む」

 机を回ってこちらに近づいてきたドラヴェンは笑みと共に右手を差し出してくる。

(……受け入れてくださるの?)

 彼と握手をしながら、思っていたよりすんなりと受け入れられたことに驚いた。
 どうやら、顔を合わせた時受けた印象は、エルニーナの間違いだったらしい。


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