氷の旦那さまに愛されて、15歳の私ははじめての恋を知る。
清正様に抱き上げられるようにして案内された食堂で、私は目を見開いた。
大きな円卓の上に、湯気を立てて並ぶ数々の料理。
じっくり煮込まれたハンバーグ、色鮮やかなサラダ、香ばしいスープ、そして見たこともないほど綺麗なデザートまで。
「……あの、これは……?」
「お前の歓迎会だ。さあ、座ってくれ。好きなものを、好きなだけ食べていいんだぞ」
清正様が自ら椅子を引いて私を座らせてくれる。
けれど、私は目の前の御馳走を前に、手を動かすことができなかった。
こんなに贅沢なごはん、私が食べていいはずがない……。
実家での食事は、いつもお父様とお姉さまが食べ残した、冷え切った固いパンやスープの残りカスだけだった。
時には、それすら与えられない日だってあったのだ。
「どうした? 口に合わなそうか?」
心配そうに覗き込んでくる清正様に、私は慌てて首を振った。
「ち、違います! 違くて……。あの、私のような嫌われ者が、こんなに温かくて美味しいごはんをいただいて、本当にいいのでしょうか……? 後で、酷いお仕置きをされたりしないでしょうか……?」
怯えながらそう言う私を見て、清正様は一瞬、胸を痛めたように端正な顔を歪めた。
そして、私の前にそっとしゃがみ込み、両手で私の手を包み込む。
「小雪。ここにはお前を怒る者も、お仕置きをする者も誰もいない。この料理はすべて、お前を笑顔にするために作らせたんだ。お前は俺の妻なんだから、遠慮なんて一切いらない」
「清正様……」
「さあ、まずはこのスープを飲んでみてくれ。温まるよ」
清正様に促され、震える手でスプーンを持ち、スープを一口、口に運ぶ。
「……っ!」
口の中に広がる、濃厚で、びっくりするほど優しい甘み。身体の芯までじんわりと温かさが染み渡っていく。
こんなに美味しいものを食べたのは、生まれて初めてだった。
「おいしい……。すごく、あったかいです……」
気付けば、目からポロポロと大きな涙が溢れ落ちていた。
「おい、小雪!? どうした、泣かないでくれ……っ!」
「ご、ごめんなさい……っ。お行儀悪くて、すみません……! でも、こんなに優しくしてもらったの、はじめてで……。私、ここで息をしていて、いいんだって思ったら……うぅ……」
実家でずっと耐えていた寂しさと、初めて誰かに受け入れてもらえた喜びが混ざり合って、涙が止まらなくなってしまった。
そんな私を、清正様は焦ったように、けれどこの上なく愛おしそうに、大きな身体でぎゅっと抱きしめてくれた。
「泣くほど喜んでくれるなんて……なんて健気な子だ。小雪、息をしていていいどころか、俺の隣にずっといてくれ。お前を泣かせるものは、過去の記憶であっても俺がすべて壊してやる。これから毎日、お前が飽きるまで美味いものを食わせてやるからな」
背中を優しくトントンと叩かれながら、私は清正様の胸の中で、生まれて初めて「お腹いっぱいになる幸せ」と「愛される温もり」を知ったのだった。
大きな円卓の上に、湯気を立てて並ぶ数々の料理。
じっくり煮込まれたハンバーグ、色鮮やかなサラダ、香ばしいスープ、そして見たこともないほど綺麗なデザートまで。
「……あの、これは……?」
「お前の歓迎会だ。さあ、座ってくれ。好きなものを、好きなだけ食べていいんだぞ」
清正様が自ら椅子を引いて私を座らせてくれる。
けれど、私は目の前の御馳走を前に、手を動かすことができなかった。
こんなに贅沢なごはん、私が食べていいはずがない……。
実家での食事は、いつもお父様とお姉さまが食べ残した、冷え切った固いパンやスープの残りカスだけだった。
時には、それすら与えられない日だってあったのだ。
「どうした? 口に合わなそうか?」
心配そうに覗き込んでくる清正様に、私は慌てて首を振った。
「ち、違います! 違くて……。あの、私のような嫌われ者が、こんなに温かくて美味しいごはんをいただいて、本当にいいのでしょうか……? 後で、酷いお仕置きをされたりしないでしょうか……?」
怯えながらそう言う私を見て、清正様は一瞬、胸を痛めたように端正な顔を歪めた。
そして、私の前にそっとしゃがみ込み、両手で私の手を包み込む。
「小雪。ここにはお前を怒る者も、お仕置きをする者も誰もいない。この料理はすべて、お前を笑顔にするために作らせたんだ。お前は俺の妻なんだから、遠慮なんて一切いらない」
「清正様……」
「さあ、まずはこのスープを飲んでみてくれ。温まるよ」
清正様に促され、震える手でスプーンを持ち、スープを一口、口に運ぶ。
「……っ!」
口の中に広がる、濃厚で、びっくりするほど優しい甘み。身体の芯までじんわりと温かさが染み渡っていく。
こんなに美味しいものを食べたのは、生まれて初めてだった。
「おいしい……。すごく、あったかいです……」
気付けば、目からポロポロと大きな涙が溢れ落ちていた。
「おい、小雪!? どうした、泣かないでくれ……っ!」
「ご、ごめんなさい……っ。お行儀悪くて、すみません……! でも、こんなに優しくしてもらったの、はじめてで……。私、ここで息をしていて、いいんだって思ったら……うぅ……」
実家でずっと耐えていた寂しさと、初めて誰かに受け入れてもらえた喜びが混ざり合って、涙が止まらなくなってしまった。
そんな私を、清正様は焦ったように、けれどこの上なく愛おしそうに、大きな身体でぎゅっと抱きしめてくれた。
「泣くほど喜んでくれるなんて……なんて健気な子だ。小雪、息をしていていいどころか、俺の隣にずっといてくれ。お前を泣かせるものは、過去の記憶であっても俺がすべて壊してやる。これから毎日、お前が飽きるまで美味いものを食わせてやるからな」
背中を優しくトントンと叩かれながら、私は清正様の胸の中で、生まれて初めて「お腹いっぱいになる幸せ」と「愛される温もり」を知ったのだった。