氷の旦那さまに愛されて、15歳の私ははじめての恋を知る。

最強で完璧な姉

【千歳家・リビング】

小雪が家を追い出されてから、数週間が経ったある日のこと。
千歳家のリビングでは、父親が真っ青な顔でガタガタと震えながら、一枚の書類を握りしめていた。
そこへ、お気に入りの綺麗なドレスを着た深雪が、優雅にお茶を飲みながら話しかける。
「父さん、どうされたのですか? そんなに青い顔をして」
「み、深雪……! 大変なことになった……!」
父親は震える声で、街の商人たちから回ってきた噂を口にした。
「小雪のやつ……皇の屋敷で、手酷い扱いを受けるどころか、もの凄く愛されているらしいんだ……!」
「は……? 何を仰っているのお父様。あの小雪が?」
深雪は思わずフッと鼻で笑った。
何をやらせても出来損ないで、いつも自分の影に隠れて怯えていた、あの薄汚い妹。
街一番の冷徹な「氷の旦那さま」に、一瞬で捨てられるか、部屋の隅で泣いているに決まっている。
「本当なんだ!  清正様は小雪に、最高級の服や宝石を買い与え、毎日贅沢な料理を食べさせているらしい。それどころか、商人の一人が『清正様が小雪様を抱きしめながら、愛おしそうに微笑んでいるのを見た』と……!」
「なっ……!?」
深雪の手から、ティーカップがガタリと落ちて床で割れた。
完璧な自分ですら、そんな風に男性から甘やかされたことはないのに。
「それだけじゃない! 我が家が小雪を虐げていたことが清正様にバレたらしく、千歳家との取引をすべて停止すると通達が来た! このままだと我が家は破産だ……!」
父親の言葉が、深雪の耳にはもう入ってこなかった。
頭の中にあるのは、激しい嫉妬と屈辱だけ。
「どうして……どうしてあんな役立たずの小雪に、あんなに素敵なお方が……? 贅沢な暮らしも、お姫様みたいな扱いも、全部この私が受けるべきなのに!」
深雪の頭に、いつか街で見かけた皇清正の姿が浮かぶ。
冷たいけれど息をのむほど美しく、圧倒的な権力を持つあの男。
「……そうよ。清正様はきっと、小雪の哀れな姿に騙されているだけだわ。皇家の妻にふさわしいのは、完璧で美しいこの私よ!」
深雪は怒りで顔を歪めながら、ギラギラとした目で父親を睨みつけた。
「父さん、私を今すぐ皇の屋敷へ連れて行ってちょうだい。私が清正様を一目見れば、あんな泥臭い小雪なんて一瞬で忘れて、私を妻にしたいと仰るに決まっているわ!」
妹への嫉妬に狂った深雪は、清正を奪い取るため、そして小雪を再び引きずり下ろすために、ついに動き出すのだった――。

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