Hidden love.
Episode1
その日の週末。私はやりきれず、久方振りに居酒屋にひとりで飲みに来た。
結婚が近くなってからは一人で行くのを控えており、お酒もやめていたのだが、めでたくおひとり様の私はそれも解禁することにした。
週末なだけあって、席は混みあっていて、たまたま運良く空いていたカウンター席に座る。
「砂肝の黒胡椒炒め、だし巻き玉子、枝豆、たたききゅうりの塩昆布和え、それと生中」
カウンターの向こうにいる店員になれたように適当に注文すると、「はいよー!」と元気よく返ってくる。
周りは賑やかなのに、私はとてもじゃないけれど、明るい気分にはなれない。週末になれば、仕事から一時的に開放される喜びを感じられるのに、全くそんな気分じゃない。
「…間違いなく今が一番どん底だわ。三十にもなって捨てられるなんて」
思わずそう呟くと隣から「清花《さやか》?」と声をかけられた。その声で隣を見ると、見覚えのある顔の人間が目を見開いてこちらを見ている。
「…大樹《ひろき》?」
質のいい黒のスーツ。髪はダークブラウンカラーに、襟足はそこまで伸びていなくて、センターパートにナチュラルなツーブロック。いかにもビジネスマンという格好をした、男がそこにいる。
朝倉《あさくら》 大樹《ひろき》。高校時代の同級生であり、当時の私の元彼である。
結婚が近くなってからは一人で行くのを控えており、お酒もやめていたのだが、めでたくおひとり様の私はそれも解禁することにした。
週末なだけあって、席は混みあっていて、たまたま運良く空いていたカウンター席に座る。
「砂肝の黒胡椒炒め、だし巻き玉子、枝豆、たたききゅうりの塩昆布和え、それと生中」
カウンターの向こうにいる店員になれたように適当に注文すると、「はいよー!」と元気よく返ってくる。
周りは賑やかなのに、私はとてもじゃないけれど、明るい気分にはなれない。週末になれば、仕事から一時的に開放される喜びを感じられるのに、全くそんな気分じゃない。
「…間違いなく今が一番どん底だわ。三十にもなって捨てられるなんて」
思わずそう呟くと隣から「清花《さやか》?」と声をかけられた。その声で隣を見ると、見覚えのある顔の人間が目を見開いてこちらを見ている。
「…大樹《ひろき》?」
質のいい黒のスーツ。髪はダークブラウンカラーに、襟足はそこまで伸びていなくて、センターパートにナチュラルなツーブロック。いかにもビジネスマンという格好をした、男がそこにいる。
朝倉《あさくら》 大樹《ひろき》。高校時代の同級生であり、当時の私の元彼である。