Hidden love.
「話くらいなら聞けるけど?」

「……ネットで見たことある。「どうしたん? 話聞こか」とか言って女の人をいい感じにホテルに連れ込むんでしょ」

「清花がいかに男を穢らわしいものとして見てるかよくわかった」


 そう言いながら、枝豆をつまむ大樹に少し笑い、私は生ビールを見下ろしていた。


「…結婚間近だったんだけどね。若くて可愛い女の子に移っちゃった」

「移った?」

「そう。二股かけられてて。それに向こうは専務のお嬢様だし、何かと都合がいいじゃない?」

「二股って時点で、どんな事情があろうと、何も擁護できないな。別れてから次に進むって単純なことすら出来ない奴の気持ちが理解できない」

「普通はそうよね。きっと私はキープだったのよ。専務のお嬢様がダメだった時の」


 私が半ば自虐の様な言葉をやけくそに言い放った時、大樹は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「…何か、うちの兄貴の彼女も元浮気された人だったな。周りでよくそういう話聞くわ。この年齢になると多いのかな」

「へぇ、そんなに聞く?」

「聞くよ。会社歩くだけでいろいろな話入ってくるし」


 そんな会話をすると、私はだし巻き玉子に手をつける。

 されるのは当然だけど、された、と聞くのも気分がいいものではない。この世の中、浮気の話が飛び交うというのも如何なものか。

 浮気をするならせめて、墓場まで持って行って欲しい。航平は別れた次の日に、婚約発表だなんて、隠す気もなかったと思う。

 彼にとって私はその程度の人間だった。それが余計に、惨めで、悔しい。
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