Hidden love.
「そもそも復讐とかは考えないの? 婚約してたなら、訴えることも出来ただろ」

「…そう、なんだけどね。あんなくそ野郎でも大事に想ってくれている人がいて、その人のことを不幸にするのは、何か違う気がしてさ」

「…裁かれた方が幸せだろ。周りも」

「本当にそうかな。私、悔しさはあるし、当然復讐も考えたんだけどね。何か、冷静になったら別れられてラッキーって思うべきだったんじゃないかって。このまま何もなく済むなら、そのままにしておいた方がいいんじゃないかとも思い始めているのよ」


 そんな私の発言に大樹は顔を顰めていた。


「お人好しすぎる。周りの事を気にしすぎて、清花はどうなるわけ」

「…きっと人の幸せに茶々入れる最低な女とか、未練たらしいって見られ方をする方が、プライド高い私には無理なのよ。だから、こうして可愛くない女が完成する」

「…俺は、やだな。そんなの」

「やだって言ってもさ…」

「人の道徳から外れた奴には、それなりの報いを受けてほしいよ」


 そう言って生ビールを煽る大樹の横顔を見ていた。この世界は、それなりに悪い人間がうまくいく世の中だと思う。信頼、愛情、優しさだけを掲げる人間は損をするようにできているんじゃないかって。

 今回も私は悪くないって思っているのに、泣き寝入りして、それを周りが…と責任を押し付けて、逃げているとも見える。私のプライドの高さはある方向から見れば酷く滑稽だと思った。

 一人の男に縋りつく姿を見せたくないと、そればかり考えていたけれど、戦うことから逃げたくせに、プライドだのなんだの語る資格がどこにあるのか。
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