Hidden love.
「…ごめん」

「今更謝るなよ。湿っぽい空気になったし酒でも飲む?」

「あ、うん」


 私の返事を聞いてキッチンに向かう大樹の背を眺めていた。

 憎まれてもおかしくないのに、ずっと好きでいてくれて、私が苦しい時にそばに居てくれる。

 大樹は見返りも求めず、ずっと尽くしてくれているのに、私だけはずっと酷いことをしている。

 戻ってきた大樹に「私を憎いと思ったことは?」と問いかけながら、グラスを受け取る。大樹は目を丸くした後、すぐに呆れたような笑みを零した。


「憎んでたらこうはならないだろ。まあ、ショックは受けたし、俺の何がダメだったかは、めちゃくちゃ考えたな。それからは我武者羅に清花に振り向いてもらうことばっか考えてた」

「…十二年も音沙汰なかったのに? お互いに」

「二十歳の同窓会の時は、まだ俺に自信がなくて、この間の三十歳の同窓会の時は清花が来なかったと思いきや、婚約中とか言うし。まあ、でも結婚していてもおかしくはなかったよな」


 今頃、結婚式の話が進んで幸せな日々を送っているはずだった。式場も決まって、ドレスや料理なんかも決まって、いろいろと準備をしている…。そんなつもりだったのに、叶わなかった。

 結婚式にはそれなりに憧れがあった。だって、自分が主役になれる式なんて、今後ほとんどないから。

 一度でいいから、夢のような場所で幸せで綺麗な自分でいたかった。


「今になって積極的に関係を持とうとしてきたのは何で?」

「まあ、仮にも付き合ってたわけだし、顔は悪くなかったと自負しているわけよ」

「すごい自信ね…」

「そんで後足りないのは何かと思ったら、金かな…と思って…」

「…それで社長に?」

「まあ、はい」


 本当に呆れる。呆れるけれど、ここまで迷走させたのは自分だと思うと何も言う気は起きなかった。
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