Hidden love.
  桐生さんは音声が止まったあと、口元に緩く笑みを浮かべていた。


「ありがとうございます。これほど揃っていたら、訴えても勝ち目は十分にあるかと思います」

「そう、なんですか?」

​「ええ。まず、彼自身が不貞行為を働いていたことを明確に認めている点。そして何より大きいのは、『婚約期間中に』という椿さんの問いかけに対して否定せず、むしろ『親に話すのがだるい』や、『結婚式の話が進む前』と発言している点が、自他共に認めている点かと思います」


​ 使えるか分からないと思っていたけれど、録音しておいてよかった。あの時、冷静ではなかったけれど、咄嗟に録音するべきだという直感に従ったことによって、吉と出たのだから。


​「今回は、結婚式の予約がまだだと聞いていたので、婚約の成立について、相手が白《しら》を切ってきた場合、少し厄介だなと考えていたんです。ですが、この発言からカバー出来そうですね」


 私はふとそこで、念の為鞄に入れて来たものを思い出した。

 航平のプライドで、かは分からないけれど、こんな高価なものを返せ、とは言わなかった。売るかも考えていたけれど、捨てるのは全てが終わったあとだと、残しておいたものがある。
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