Hidden love.
 私はもうひとつの可能性についても、ほんの少し警戒していたのだけれど、そちらは桐生さんの言った通り、この場で騒がれることはなかった。

 不安要素は一つでも消しておくべきだと思い、これも相談していた。


「もし、航平が私と大樹の件を執拗に言い出したら、どうしたらいいのでしょうか?」

「そんな体裁の悪いことしないと思いますけどね。話を聞く限りプライドもかなり高いみたいですから」

「どうしてですか?」

「大樹の前だけならともかく、人事部長もいる前です。その状況で、執拗に椿さんと大樹の件を突っ込んでも、第三者目線は苦し紛れで最後の抵抗している、と思うのではないでしょうか? 事実か分からないことを突っ込めば、人事部長もリスクですし、まずは確実に判断できることで対処を考えると思います」


 これも、絶対ではなかったが、聞いていたおかげで多少強気に出られた。じわじわと航平を追い込んでいる実感もあった。


「なんだよ。和解の条件って」

「職場環境を整えたいので、他の支社への異動を申し出てください。そうすれば慰謝料は本来の婚約破棄の相場、百五十万まで落とし、裁判は致しません」


 航平の拳が強く握られるのを見た。そりゃそうだと思う。専務のお嬢様との婚約が決まっていて、そのお嬢様にどう説明するのか。

 それに、支社へ移動した時点で、彼が望むようなエリート街道は絶たれるはずだ。

 だけど、既に周りで噂がたっている以上、裁判ともなれば、航平が浮気していたという噂も、勝手に立ち、肩身の狭い思いをすることになる。彼がそれを放置してでも本社に残れるのか。


「うちとしては営業が、浮気で婚約破棄し、裁判なんて噂が外に立つのも困りますよね。社長」


 齋藤さんは眉を顰め困った表情で大樹に問いかけていた。大樹は真っ直ぐに航平を見ている。
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