Hidden love.
「…どうあれ、やると決めたのは私。後悔は、ない」


 あいつは確かに痛い目を見た。それだけでも良かったと思うしかない。あんな男にけじめとか、そういうものを望んだところで無理な話。

 大樹は私が前に進めるように背中を押してくれ、手助けをしてくれた。そんな彼を責める言葉なんて、あるはずがない。

 大樹から離れて、屋上の柵の方へ向かい、そこに腕を乗せる。夕暮れなんていつも見慣れていると思ったのに、改めてゆっくりと眺めれば綺麗だと思った。

 ここ最近はそんな当たり前にも気付けなかった。日々に忙殺され、空を見上げる時間もなかった。


「清花」

「何よ」


 大樹は私の左隣に来ると、そのまま手を取り、薬指に何かはめられる。


「…え?」


 この間とは違うデザインのもの。そして今度は、ぴったりとはまっている。

 大樹を見ると、指輪が私の指を通るところを見て安堵したような表情をしていた。


「あんなのがプロポーズは味気ないよな」

「…な、に?」

「これは、婚約指輪。こんなことが終わったばかりで体裁もあるだろうし、しばらくは着けなくてもいいけど、俺の気持ちとして送りたかった」


 私の手をそのまま掴み、親指で優しく手の甲を撫でる。大きな手で包み込まれ、それが守られているみたいで、ひどく安心する。
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