Hidden love.
 それから、ふと自動販売機に飲み物を買いに行く時だった。


「てか、お前いつ椿さんと別れてたん」


 そんな声が聞こえ、思わず影に隠れる。そのワードだけで分かる。きっとその場に、航平もいる。


「ああ、昨日」

「は? それなのに檜山さんと婚約? お見合いかなんか受けてたわけ?」

「そろそろ遊びは終わりにして、俺も安定を目指そうかなって。安定させてくれる娘と若くて可愛いって来たら、そんなもんアラサー女よりそっちとるだろ?」

「お前、容赦ねぇな。いつから出来てた?」

「まあ、半年くらい? 俺も結婚したいんだよねって、口説いたら箱入り娘はすぐ落ちてくれたわ」


 そんな不愉快な内容を堂々と大きな声で話している。二股されていた。それも、私とも婚約の話を進めながら、別の女性と条件を選別していた。

 思わず拳を握りしめ、すぐに怒鳴ってやりたい気持ちになる。ふうっ、と軽く息を吐いたが、この時の私は、冷静になれていなかったと思う。

 スマートフォンで録音アプリを立ち上げ、それをポケットに入れると、そのまま航平の元へ向かった。


「今の話本気? 二股掛けてたってこと? 私との婚約期間中に」


 務めて冷静な声を取り繕う私に、航平羽目を見開きこちらを見る。もう一人の男性社員は気まずそうにして、その場で航平を見ている。

 明らかな修羅場、当事者の私ですら逃げ出したい。
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