Hidden love.
「まさか、覚えてたなんて思わなかった」

「覚えているに決まってるだろ。清花の願いは、俺の願いでもあるんだから、全力で叶える」


 そう言って、私と向かい合うように座らせると、腰を支える。ほんの少し私の方が目線が高い。こんなふうに見上げられることはないから新鮮だ。

 大樹と見つめ合うと、軽く首を傾げている。


「聞いてます? 俺の話」

「聞いてるよ」

「籍はいつ入れる?」

「あのさ、私今の職場にいてもいいのかな」

「…何で?」


 これは航平が異動すると決まった時にずっと考えていた。会社には少なからず私も迷惑をかけてしまった。

 その何らかの責任は取らないといけない。私が残ったことで大樹が私を庇ったからって見られ方を今後するのも困る。

 それに、新卒から働き続けた会社だから、情もあるけれど、絶対にここじゃないといけないというわけでもない。

 だけど、環境整備のためだなんだと言って、航平を移動させたのだから、会社にこれまで以上に貢献しないと、という両方の気持ちがあった。

 これに対して、私はどう答えるべきなのか悩んでいて、今の私の気持ちとしては後者だった。


「なあ、家庭に入るとかは、考えたことある?」

「え?」

「働きたいなら止めないけど、家庭に入って清花が趣味に没頭したり、他のことをするのもいいのかなって思ったりもしてる」


 確かに私は趣味と言えるほどのものを持っていない。強いていえば、休日に少し買い物に出かけて、映画を観る程度で、自分で趣味と言えるほどの趣味もなかったような気がする。

 仕事が好きな訳でもないし、確かに自分とも向き合う時間が貰えれるなら、それも嬉しい。


「大樹に負担かけない? お金も貯金はかなり貯めて来たつもりではあるけど…」

「そんなこと気にしなくていいよ。貯金がなくてもあっても、俺は清花を養うことしか考えてないから。肩身の狭い会社で働いてきたわけだし、少しは自由に過ごして欲しい」


 そう言いながら私の頭を撫でてくる。彼は私の頭をよく撫でる。これが嫌いじゃない。
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