Hidden love.
 ドアの向こうから顔を出したのは大樹だった。髪は綺麗に上げ、白のタキシードを身に着けている。

 私は初めて彼に見惚れた時のように、彼の姿に目を奪われた。綺麗だと思った。

 綺麗なんて、男性に使う言葉には似合わないかもしれない。


「綺麗だな」


 そう微笑む彼に目を見開いた。私は思わず笑みがこぼれた。

 学生時代、私が彼を綺麗だと思った日も口にはすぐに出せなかったのに、彼は私に対して綺麗だと迷いもなく答えてくれた。今だって、あの日のように。

 私が笑うのを見て、大樹は首を傾げている。


「どうして笑う?」

「…あの日と一緒だと思ったのよ」

「あの日? なんのこと?」

「…ううん。何でもない」


 そう笑って首を横に振る。そんな私に「変なの」と言って笑うと、近寄ってくる。


「本当に綺麗だよ」

「大樹も、素敵だよ」

「まあ、俺は何でも似合うから」

「こんな日まで減らない口ね」


 そう言いながら笑い合うと、またドアがノックされる。それに対し大樹が、「はい」と返事をすると、女性スタッフの「失礼いたします」と声が聞こえ、ドアが開く。


「そろそろ式のリハーサルを行いますが、準備はいかがでしょうか?」

「今行きます」


 そんなやり取りをすると、大樹は私の方に手を差し出す。私はその手をそっと掴むと、慎重に引き寄せ隣を歩いてくれる。

 ドレスは重たくて歩きずらい。ゆっくりでしか歩けないのがもどかしい。

 そんなもどかしさに彼は付き合い、隣を歩いてくれる。文句も言わず、ただただ私だけを見て、歩幅を小さくして、歩調を合わせてくれている。

 それだけで私はこの人と結婚してよかったと思えるのだ。
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