レディ・マーメイド
樹莉を守る
樹莉をリビングに残して隣の執務室に戻った亜紋は、遅れてやって来た黒木に指示を出す。
「これからもう一度パレ・ド・フローラに行って、様子を見てきてくれ。なにが目的で更衣室とゴミ置き場が荒らされたのか、不審なものは見つかったのか、警察の話なども。あのホテルの支配人は俺もよく知っている。俺が事態を小耳に挟んで心配していると話し、支配人と直接やり取りしてくれ」
「かしこまりました。樹莉さまについてはなにかお伝えしますか?」
「いや、今日のところはまだ言い出さなくていい。樹莉が襲われたと知れば、妙な勘繰りや噂になるかもしれない。それにどこから金盛と須藤の耳に入るかもわからないからな。樹莉がここにいることは気づかれるな」
「承知しました。樹莉さまにもそのように伝えておきます。スタッフ一人一人にヒアリングするとのことでしたから、オフにもかかわらず樹莉さまに電話がかかってくるかもしれませんので」
「そうだな、頼む」
「はい。それでは行ってまいります」
黒木がお辞儀をして出て行くと、亜紋は大きく息をついた。
(樹莉はなにも知らずに襲われた。一体、やつらはなにを探している? それは既に見つかったのか?)
もし見つかっていれば樹莉が再び襲われることはないだろう。
そう思ってから、いや違うと即座に否定した。
(やつらは、樹莉が秘密を握ったと思い口封じするかもしれない。ますます危険だ)
探している重要なものが見つかろうが、樹莉が狙われることは変わらない。
そしてホテル ロイヤルクレストを陥れようとしていることも。
亜紋は指で目頭をグッと押さえた。
(樹莉はここで守らなければ。職場にも行かせたくはないが、そういう訳にもいかないだろう。黒木が樹莉を送迎して守りつつ、一刻も早く金盛と須藤の悪事を暴く)
樹莉をこれ以上不安にさせたくもなかった。
ふと、先程見た樹莉のドレス姿を思い出す。
ひと目見て、その美しさに思わず目を奪われた。
アクアブルーのノースリーブのドレスから伸びた白くて細い腕。
ふわりと広がるスカートからスラリときれいな膝下の足が覗き、肩の上で軽く揺れる髪も樹莉の雰囲気を優しく彩っていた。
周囲の女性はわざと身体のラインを強調するタイトなドレスで近づいて来ることが多く、媚びるような態度に辟易していた亜紋の目に、樹莉はとても清らかで新鮮に映った。
(あんな女性もいるんだ)
そう考える自分に苦笑いする。
どうやら相当、女性に対する苦手意識が強いらしい。
思い返せばここ数年は恋人も作らず、知らず知らずのうちに女性を避けるようになっていた。
恋愛なんて面倒だ。
仕事に集中する為にも、恋人なんていない方がいい。
そう思っていた。
パーティーで女性と挨拶を交わしても、特に印象には残らない。
ビジネス上、必要な情報だけをインプットする。
けれど先程の樹莉の姿は、そんな考えを飛び越えて目に焼きついた。
今も鮮やかにまぶたの裏に浮かび上がる。
(樹莉は俺が守らなければ)
改めて強くそう思った。
「これからもう一度パレ・ド・フローラに行って、様子を見てきてくれ。なにが目的で更衣室とゴミ置き場が荒らされたのか、不審なものは見つかったのか、警察の話なども。あのホテルの支配人は俺もよく知っている。俺が事態を小耳に挟んで心配していると話し、支配人と直接やり取りしてくれ」
「かしこまりました。樹莉さまについてはなにかお伝えしますか?」
「いや、今日のところはまだ言い出さなくていい。樹莉が襲われたと知れば、妙な勘繰りや噂になるかもしれない。それにどこから金盛と須藤の耳に入るかもわからないからな。樹莉がここにいることは気づかれるな」
「承知しました。樹莉さまにもそのように伝えておきます。スタッフ一人一人にヒアリングするとのことでしたから、オフにもかかわらず樹莉さまに電話がかかってくるかもしれませんので」
「そうだな、頼む」
「はい。それでは行ってまいります」
黒木がお辞儀をして出て行くと、亜紋は大きく息をついた。
(樹莉はなにも知らずに襲われた。一体、やつらはなにを探している? それは既に見つかったのか?)
もし見つかっていれば樹莉が再び襲われることはないだろう。
そう思ってから、いや違うと即座に否定した。
(やつらは、樹莉が秘密を握ったと思い口封じするかもしれない。ますます危険だ)
探している重要なものが見つかろうが、樹莉が狙われることは変わらない。
そしてホテル ロイヤルクレストを陥れようとしていることも。
亜紋は指で目頭をグッと押さえた。
(樹莉はここで守らなければ。職場にも行かせたくはないが、そういう訳にもいかないだろう。黒木が樹莉を送迎して守りつつ、一刻も早く金盛と須藤の悪事を暴く)
樹莉をこれ以上不安にさせたくもなかった。
ふと、先程見た樹莉のドレス姿を思い出す。
ひと目見て、その美しさに思わず目を奪われた。
アクアブルーのノースリーブのドレスから伸びた白くて細い腕。
ふわりと広がるスカートからスラリときれいな膝下の足が覗き、肩の上で軽く揺れる髪も樹莉の雰囲気を優しく彩っていた。
周囲の女性はわざと身体のラインを強調するタイトなドレスで近づいて来ることが多く、媚びるような態度に辟易していた亜紋の目に、樹莉はとても清らかで新鮮に映った。
(あんな女性もいるんだ)
そう考える自分に苦笑いする。
どうやら相当、女性に対する苦手意識が強いらしい。
思い返せばここ数年は恋人も作らず、知らず知らずのうちに女性を避けるようになっていた。
恋愛なんて面倒だ。
仕事に集中する為にも、恋人なんていない方がいい。
そう思っていた。
パーティーで女性と挨拶を交わしても、特に印象には残らない。
ビジネス上、必要な情報だけをインプットする。
けれど先程の樹莉の姿は、そんな考えを飛び越えて目に焼きついた。
今も鮮やかにまぶたの裏に浮かび上がる。
(樹莉は俺が守らなければ)
改めて強くそう思った。