レディ・マーメイド
翌日。
亜紋は金盛の音声データを、ゴールデンワールドホテルの副社長である、和田(わだ)に送信した。

あの時、金盛の目の前で消去してみせたデータは、自動転送でクラウド上に保存されていたのだ。

まだ40代と若い和田副社長は亜紋とも親交があり、金盛と違って信頼できる。

亜紋はこの一件を和田に明かし、社内調査を依頼した。

その結果、会社の金800万円を金盛がプライベートバンクに移したことが判明。

ライバル企業への嫌がらせという勝手な個人の企みの為に会社に巨額の損害を与えたとして、和田副社長は金盛を刑事告訴し、金盛は特別背任罪で警察に逮捕された。

社員の横領などよりも、社長の特別背任は刑が重い。

そして共犯として、須藤も逮捕された。

全てが片づくと亜紋は改めて電話で和田にお礼を伝える。
和田は「こちらこそだよ」と答えた。

「亜紋くんのおかげで助かった。あのままマンハッタンに派手なホテルを建設していたら酷評の嵐で、ゴールデンワールドホテルはおろか、日本のホテル業界の評判も地に落とすところだった。私では金盛社長を止めることができず、しかも特別背任までも許してしまった。ご迷惑をかけて申し訳ない。これからは私が社長となり、まっさらな状態でこのホテルを立て直していくよ」

そう話す和田に、亜紋も心から安堵した。
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