レディ・マーメイド
それから2週間が経った頃。
パレ・ド・フローラにホテルや旅行業界の関係者を集め、行政が来年3月から開催する国際博覧会『フラワーエキスポ』の説明会を行うことになった。
一番大きなバンケットホールにびっしりと丸テーブルを並べ、樹莉達は前日から準備に追われる。
エキスポ開催時には、各国の主要人の宿泊先を花繋がりでパレ・ド・フローラにと考えているらしく、その下見も兼ねて説明会の場もこのホテルが選ばれたようだった。
とにかく粗相がないようにと、樹莉達は細部まで神経を行き渡らせておもてなしする。
「樹莉さん」
「黒木さん!」
訪れるゲスト一人一人をテーブルに案内していると、後ろから黒木に呼ばれた。
いつもと変わらない黒木の笑顔に、緊張の糸がほぐれて樹莉はホッとする。
だが、背後に目をやっても亜紋の姿はなかった。
あれ?と思っていると、黒木がクスッと笑う。
「亜紋さんは急にイギリスのロイヤルクレストに視察に行くことになってね、3週間ほど留守にしてるんだ。ごめんね、俺だけが来ちゃって」
「いえ、そうだったんですね。黒木さんはイギリスには同行されなかったのですか?」
「うん。こっちでも重要な仕事があるから、それを任されたんだ。今夜のエキスポ説明会もね」
「なるほど」
その時「こんばんは、小早川さん、黒木さん」と声をかけられ、二人は振り返る。
和田が笑みを浮かべて近づいて来来るのが見えた。
「和田社長。こんばんは」
「こんばんは。随分大掛かりな説明会だね。著名人がズラリと顔を揃えている」
「ええ。議題も多くて、2時間以上かかりそうですよ」
「長丁場だな。居眠りしていたら起こしてくれる?」
「ふふっ、はい。冷たいお水をお持ちしますね」
そんなことを話しているうちに、開会の時間が迫ってきた。
樹莉はスタッフ達と確認しながら、全てのゲストが揃ったことを主催者に告げる。
照明とBGMを絞り、いよいよ開会の挨拶となった。
エキスポの概要が説明される中、樹莉達スタッフはバックヤードでてきばきとお皿やグラスを用意する。
「すごいね、エキスポに合わせて花火も毎週末打ち上がるんだって」
「パレ・ド・フローラの客室からも見えるから、予約が殺到しそうよね」
そんな話をしつつ、なるべく邪魔にならないように気をつけながら、テーブルに料理やドリンクを運んだ。
和田と黒木は同じテーブルで、居眠りなんてする素振りもなく、二人とも熱心に資料を読み込んでいる。
「失礼いたします」
小さく声をかけて料理と飲み物を置くと、二人は「ありがとう」と優しく樹莉に笑いかけた。
パレ・ド・フローラにホテルや旅行業界の関係者を集め、行政が来年3月から開催する国際博覧会『フラワーエキスポ』の説明会を行うことになった。
一番大きなバンケットホールにびっしりと丸テーブルを並べ、樹莉達は前日から準備に追われる。
エキスポ開催時には、各国の主要人の宿泊先を花繋がりでパレ・ド・フローラにと考えているらしく、その下見も兼ねて説明会の場もこのホテルが選ばれたようだった。
とにかく粗相がないようにと、樹莉達は細部まで神経を行き渡らせておもてなしする。
「樹莉さん」
「黒木さん!」
訪れるゲスト一人一人をテーブルに案内していると、後ろから黒木に呼ばれた。
いつもと変わらない黒木の笑顔に、緊張の糸がほぐれて樹莉はホッとする。
だが、背後に目をやっても亜紋の姿はなかった。
あれ?と思っていると、黒木がクスッと笑う。
「亜紋さんは急にイギリスのロイヤルクレストに視察に行くことになってね、3週間ほど留守にしてるんだ。ごめんね、俺だけが来ちゃって」
「いえ、そうだったんですね。黒木さんはイギリスには同行されなかったのですか?」
「うん。こっちでも重要な仕事があるから、それを任されたんだ。今夜のエキスポ説明会もね」
「なるほど」
その時「こんばんは、小早川さん、黒木さん」と声をかけられ、二人は振り返る。
和田が笑みを浮かべて近づいて来来るのが見えた。
「和田社長。こんばんは」
「こんばんは。随分大掛かりな説明会だね。著名人がズラリと顔を揃えている」
「ええ。議題も多くて、2時間以上かかりそうですよ」
「長丁場だな。居眠りしていたら起こしてくれる?」
「ふふっ、はい。冷たいお水をお持ちしますね」
そんなことを話しているうちに、開会の時間が迫ってきた。
樹莉はスタッフ達と確認しながら、全てのゲストが揃ったことを主催者に告げる。
照明とBGMを絞り、いよいよ開会の挨拶となった。
エキスポの概要が説明される中、樹莉達スタッフはバックヤードでてきばきとお皿やグラスを用意する。
「すごいね、エキスポに合わせて花火も毎週末打ち上がるんだって」
「パレ・ド・フローラの客室からも見えるから、予約が殺到しそうよね」
そんな話をしつつ、なるべく邪魔にならないように気をつけながら、テーブルに料理やドリンクを運んだ。
和田と黒木は同じテーブルで、居眠りなんてする素振りもなく、二人とも熱心に資料を読み込んでいる。
「失礼いたします」
小さく声をかけて料理と飲み物を置くと、二人は「ありがとう」と優しく樹莉に笑いかけた。