レディ・マーメイド
12月も半ばを過ぎた頃。

「はやーい、もうクリスマスが目の前だよ」

出勤して更衣室で制服に着替えながら、静香がしみじみと語る。

「ついこの間、年が明けた気がするのに。1年ってあっという間だよね」
「確かに。でも今年は私、バンケットスタッフとして働き始めて静香先輩にも出会えたし、とても充実した年になりました」
「私も、樹莉ちゃんと知り合えてよかった。あと少しだけど、よろしくね」

はい、と頷きかけて、樹莉は「ん?」と首を傾げた。

「先輩、あと少しって?」
「私、来年の3月末でバンケットスタッフ丸3年になるから、4月からブライダルサロンに異動になるんだ」

ええー!?と樹莉は仰け反って驚く。

「しー! 樹莉ちゃん、まだ内緒だよ」
「あ、はい。でも、そんな……。私、寂しくて。先輩がいなくなったら、心細いです」
「あら、私も樹莉ちゃんと離れるのは寂しいわ。でも樹莉ちゃんなら大丈夫! 私が教えることなんて、もうなんにもないもの。それに同じホテルにいるんだから、いつでも会えるわよ。ブライダルは披露宴でバンケットスタッフとも連携するし、これからも隙を見ておしゃべりしましょ」
「はい!」

二人で明るく笑い合う。

(あと少し、先輩との日々を大切にしよう)

樹莉はそう心に決めた。
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